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香川医療生活協同組合

診療報酬改定について-在宅医療の問題点(2)

(第642回 4月11日 )

 4月からの診療報酬改定について、在宅医療に関連した問題点に触れます。第637回(3月18日付)の続きです。

 自宅、アパートやマンション、サービス付き高齢者住宅(サ高住)、ケアハウスなど、居住施設の違いはあっても、医師が往診に来た時に受ける医療内容に変わりはありません。患者の側から見れば同じなのですが、医療機関側からみれば少し違います。

 東京・大阪などの大都市圏なら、徒歩や自転車、バイクなどで移動可能な距離に患者宅があるかもしれません。しかし、地方ではそういう訳にはいきません。善通寺市の場合でみても、車を使わないと移動はできません。車で数分程度で移動可能な場合もありますが、10分前後、時には20分以上かかることもあります。

 例えば10人の往診患者を診察するのに、地方の「自宅」を移動するのと、高齢者住宅や施設で複数の患者を診察するのとを比べると、明らかに「効率」が違います。この3月までは、一軒家を移動しながら一人一人診察するのと、高齢者住宅などで診察室を使ったり各個人のお部屋を移動して一人ずつ診察する時の報酬には差がついていました。戸建て住宅の場合は8,300円に対し、看護師が配置されたサービス付き高齢者住宅で、同一日に複数の方の診療を行う場合は4,0000円、マンションや看護師配置のないサービス付き高齢者住宅で、同一日に複数の方の診療を行う場合は2,000円でした。

 しかし、最近では高齢者住宅の多くが建設業など医療福祉とは異なる業種が設立、入居者を医師に紹介し、診療報酬の一部を見返りとして受け取っていたいう事例が報道されるようになりました。2013年10月23日の第252回中央社会保険医療協議会でこういった事例が報告され、問題視されました(注)。

 今回の改定ではこういった問題を反映して、戸建て住宅の場合は消費税増税を反映して8,330円に増えたのに対し、サービス付き高齢者住宅(看護師の配置がある場合)で同一日に複数の方の診療を行う場合は2,030円、マンションやサービス付き高齢者住宅(看護師配置がない場合)は1,030円に減額されました。

 もちろんこういった「患者紹介ビジネス」は、問題です。しかし、今回問題になったのは、高齢者住宅等を建設した業者は問題にされず、いわば医療機関だけが「ペナルティー」をうけた形になっています。

 例えば、胃の調子が悪く診察を受け、胃薬を2週間分処方されたとします。薬がよく効いたので2週間後に診察を受け、食事や生活上の注意点を医師に指示された上で再度投薬を受けたとします。1回目が初診、2回目が再診ですが、再診の場合、投薬料を除くと再診料+外来加算で1,240円になります。つまり施設等に赴いて複数の方を診察した方が、医療機関で診察するより評価が低くなったのです。できるだけ地域に出て、患者が在宅・施設で医療が受けられるように努力している医師の意欲をそぐことになります。

 不適切事例の元凶である施設の建設をした業者は問題にならず、医療機関だけを問題視する診療報酬には問題があります。速やかに診療報酬を是正すべきです。

 注:下記のHPを参照ください。129頁以降が、この問題に触れられて部分です。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000027523.pdf


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