あなたにもあげたい 笑顔 健康

TOPヘ

香川医療生活協同組合

「社会保障制度改革国民会議報告書」の問題点6  年金はどうなるか

(第634回 3月4日 )

 地方政治新聞「民主香川」に、「税と社会保障の一体改革は国のかたちをどのように変えるか」を連載しています。2014年2月16日号(1626号)に掲載した、第21回 「社会保障制度改革国民会議報告書を読み解く(その6)」、を転載します。一部修正しています。

 「社会保障制度改革国民会議報告書」の医療分野について連載してきましたが、続きは4月に回します。というのも、2014年4月に診療報酬と介護報酬の改定が行われます。介護報酬の改定は消費税増税に伴うもので、制度的な変更は15年4月に行われる予定です。医療費の定価を示す診療報酬の改定は2年に1回行われるもので、「税と社会保障の一体改革」の内容が強く反映しています。そこで、診療報酬の詳細が明らかになってから触れたいと思います。

 今回は、「年金分野の改革」です。まず、(1)納付率低下(未納の増加)、(2)低年金者・無年金、(3)基礎年金の最低保障機能の強化等が大きな課題だとしています。この認識に大きな間違いはないと思います。

 そして、12年の年金関連四法の成立により、基礎年金の国庫負担割合2 分の1 の恒久化や年金特例水準の解消が行われたとしています。

 さて、「年金特例水準の解消」とは何でしょうか。

 支給開始から年金額が全く変わらないと、物価が上昇時に年金受給者の生活は苦しくなります。そこで、概ね5年に一度の年金制度改正の際に、その間の経済成長や賃金の上昇を反映させた年金額の引上げ、それ以外の年度においても、前年の物価上昇に応じた年金額の引上げを行ってきました。

 しかし、00年前後の物価下落時に際し、00年から02年の年金額が3年間の累計で1.7%の引き下げになるため、据え置きにするという「物価スライド特例措置」を行いました。その後、03年に対前年度で0.9%減、04年0.3%減と年金額を減らしています。

 04年に年金制度の改定があり、賃金の伸びや物価変動を基礎としながら、現役人口の減少や平均余命の伸びの分だけ年金額のスライド率を抑制する「マクロ経済スライド」が導入されました。

 05年に物価が下落し06年に0.3%の削減を行いますが、その後は物価や賃金の変化にかかわらず、06年の年金水準を「物価スライド特例水準」として、マクロ経済スライドは実行されませんでした。

 そのため、「物価スライド特例措置」と「物価スライド特例水準」により、本来削減するはずだった年金額(本来水準)と現実に支給されている年金額(特例水準)の間には「2.5%」の差がある。これを「解消」する=もともと削減するはずだった額まで削減する=ことが必要だというのが、「特例水準の解消」という意味です。

 「税と社会保障の一体改革」の中で、12年に年金関連四法の一つとして「国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律」が成立しました。

 その内容は、老齢基礎年金等の年金額の「特例水準=2.5%」を、13年から15年の3年間で、13年10月に1.0%、14年4月に1.0%、15年4月に0.5%削減するというものです。

 この問題は、高齢者だけの問題ではありません。年金に連動してスライド措置が採られてきた、ひとり親家庭や障がい者等の手当の特例水準(こちらは1.7%)も13年10月に0.7%、14年4月に0.7%、15年4月に0.3%削減するというものです。昨年秋から全国で取り組まれている「年金下げ不服審査請求」の運動には、こういった背景があります。

 月6.8万円の年金を2.5%引き下げると、月額で1700円引き下げになります。年間では2万円以上引き下げられることになります。4月からは消費税増税に加え、前期高齢者なら医療費負担は1割から2割に、後期高齢者なら保険料の大幅増になります。

 消費税増税が社会保障の財源にならないことは、こういった事実を見るだけでも明らかです。


関連項目へ 矢印 "飛来峰"バックナンバー

TOPへ 香川医療生活協同組合
フッターのライン