(第632回 2月21日 )
4月から診療報酬と介護報酬が改定されます。介護報酬は消費税増税に対応したものですが、4月のケアプランを立てるケアマネジャーは、3月から新しい報酬で利用者に説明が必要になります。利用者負担は増えますから、利用を減らす方も出るではないかと心配されるところです。
診療報酬は2年に1回改定され、2014年4月に行われますが、今回は消費税増税をどう反映させるのかが問題となりました。
通常の商取引では、消費税を負担するのは消費者ですが、医療の最終消費者は医療機関です。通常の商売なら、定価(本体価格)が100円の場合、現在105円で販売しているものを、108円で販売すればよいということになります。105円が108円になると、(108-105)/105≒2.86%の値上げということになります。
ところが、診療報酬は点数で決められ、1点10円で計算します。例えば、初めて医療機関を受診した時の初診料は、270点(2700円)ですから、先の計算でいうと、270点×1.0286≒277.7点ということになります。診療報酬のすべての項目について、こういった計算を行い、端数を調整するのは現実的な方法ではありません。
今回は、医療費全体でみた消費税増税の影響を初診料・再診料・入院料などで引き上げを行い、調整することになりました。この方法で、本当に医療機関の負担が適正なものになるかどうかは今後の検討が必要です。
具体的には、病院・診療所とも、初診料は270点から282点に引き上げ、再診料は69点から72点に引き上げられることになりました。しかし、2月5日付「日経」は、「診療報酬改定(案)-医療機関に手厚く」「初診料120円上げ-増税分超す上乗せ」などと医療機関を非難する見出しで、「増税幅を上回る引き上げを平然と求める医療関係者の感覚の鈍さは否めない」と報道しました。
今回の診療報酬改定の個別項目を見ると、引き上げもあれば引き下げもあります。そういった具体的な内容を見ることもなく、初・再診料だけを取り上げて単純な計算を行い、「増税分超す上乗せ」と報道するのは、「経済」を専門をウリにするマスコミとしては、お粗末な記事と言わざるをえません。
2013年12月20日に田村厚生労働大臣と麻生財務大臣の間で、診療報酬改定率について、薬価・材料価格の引き下げ分を診療報酬本体の引上げに振替えることをせず、総枠マイナス1.26%とすることで合意しました。これを前提にして、最終的に消費税を負担する医療機関に対して1.36%の補填を行ったというのが実際です。
こういった事実を前提にして医療費のあり方を考えていく必要があります。しばらく、今回の診療報酬の改定の問題点を連載していきたいと思います。
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