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首相の判断で憲法解釈が変わるのは、立憲主義の否定です

(第631回 2月18日 )

 安倍首相は、集団的自衛権の行使に関する憲法解釈について、2月12日の予算委員会で、「(政府の)最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持って、その上で選挙で審判を受ける」と述べました。

 13日付東京新聞は、「憲法解釈に関する政府見解は整合性が求められ、歴代内閣は内閣法制局の議論の積み重ねを尊重してきた。首相の発言は、それを覆して自ら解釈改憲を進める考えを示したものだ。首相主導で解釈改憲に踏み切れば、国民の自由や権利を守るため、政府を縛る憲法の立憲主義の否定になる」と指摘しています。

 立憲主義とは、国が政治を行うやりかた、具体的には法律を定めていくわけですが、その時の大本になるルールが憲法にある。つまり、あらゆることは憲法にもとづいて行われるということです。憲法とは、国民の権利を制限するルールではありません。国・政府が自由気ままに政治を行うことができないように、守るべき最低限のルールを定めたものなのです。

 現在の日本国憲法は1946年11月3日に交付され、1947年5月3日に施行されました。そこで、憲法をわかりやすく解説するために、1947年に文部省が中学1年用の社会科教科書として「新しい憲法のはなし」を作成しました。当時の政府が、現行憲法をどのように考えていたのかがよくわかる冊子です。

 その、第1章にあたる、「憲法」には、「国を治めてゆく仕事のやりかたは、はっきりときめておかなければなりません。そのためには、いろいろ規則がいるのです」「そのうちで、いちばん大事な規則が憲法です」「国をどういうふうに治め、国の仕事をどういうふうにやってゆくかということをきめた、いちばん根本になっている規則が憲法です」と書いてあります。

 時の政府がどう考えるかで政治の方向が決まる訳ではないのです。政策の内容はいろいろあるかもしれませんが、政府がかわれば解釈も変わるというものではないのです。

 続いて、「どこの国でも、憲法をいちばん大事な規則として、これをたいせつに守ってゆくのです。国でいちばん大事な規則は、いいかえれば、いちばん高い位にある規則ですから、これを国の『最高法規』というのです」と記されています。

 第2章にあたる「民主主義とは」の項には、「もし意見が分かれたときは、どうしますか」「まずみんなが十分にじぶんの考えをはなしあったあとで、おゝぜいの意見で物事をきめてゆくのが、いちばんまちがいがないということになります」と書いてあります。

 首相は、集団的自衛権の行使容認に向けて検討を進めている政府の有識者会議について、「(内閣法制局の議論の)積み上げのままで行くなら、そもそも会議を作る必要はない」と指摘しています。

 意見が分かれた時には、十分話し合うべきだという、日本国憲法の考え方が分っていないのではないかと疑念をもつ発言です。


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