地方政治新聞「民主香川」に、「税と社会保障の一体改革は国のかたちをどのように変えるか」を連載しています。2013年10月20日号(1614号)に掲載した、第17回 「社会保障制度改革国民会議報告書を読み解く(その2)」、を転載します。一部修正しています。
社会保障制度改革国民会議が、8月6日に発表した「社会保障制度改革国民会議報告書~確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋~」(以下、「報告書」と略)の内容について、触れていきたいと思います。
「報告書」の第2部は、「社会保障4分野の改革」と題して、少子化、医療、介護、年金分野の改革について述べています。
今回は、介護保険制度改革です。
「『範囲の適正化等による介護サービスの効率化及び重点化を図る』こと‥…が求められている。……ついては、……予防給付の見直しのほか、利用者負担等の見直しが必要である。……公平性の視点から、一定以上の所得のある利用者負担は、引き上げるべきである」と述べています。
まず、「予防給付の見直し」が挙げられています、「予防給付」とは、介護認定を受けた方で、要支援1・要支援2とされた方に対する介護サービスです。といっても、訪問介護(ホームヘルプサービス)や、通所介護(デイサービス)、通所リハビリ(デイケア)のサービスを受ける時にサービス内容が異なる訳ではありません。支給限度基準額が異なるため、回数が大幅に制限を受けるという点に差があります。
2015年からの改定では、このサービスを介護保険から外してしまい、自治体が「地域の実情に応じ、住民主体の取組等を積極的に活用しながら柔軟かつ効率的にサービスを提供」する、つまり自治体の責任に置き換え、ボランティアの活用を行う事業に変えてしまおう、ということなのです(※)。
財政が豊かでない自治体では、そこまで手が回らないのでサービスは低下します。ボランティアがいなければ放ったらかしになるでしょう。結局、要支援者は介護保険の対象ではなくなるかもしれない、ということなのです。
要支援者の多くは、いわゆる虚弱老人が多く、一見自立しているように見えても、軽い認知症があったり、もの忘れがひどく日常生活に困難を抱えている場合が多いのです。「配食や掃除、買い物といったサービス利用が多く、自立支援につながらない」という意見もありますが、実際は食事や掃除などの日常生活に直結するサービスがあってはじめて、一人暮らしが可能であったり、老老介護が可能になるのです。
「利用者負担等の見直し」では「一定以上の所得のある利用者負担」を引き上げるというものです。現在検討している案では、年金収入で年間280万円以上(または290万円以上)の場合、2割負担になります。その影響は、65歳以上の高齢者の約2割にのぼるとみられます。これでは、何のために保険料を払っているのか、ということになります。
介護保険の利用料が高額になった場合に払い戻しされる「高額介護サービス費支給制度」(住民税世帯課税の場合、世帯合計で月3万7200円)がありますが、在宅サービスの1人あたり平均利用料は、高額介護サービス費の半分以下のため、大多数の高齢者は軒並み2倍に跳ね上がります。