地方政治新聞「民主香川」に、「税と社会保障の一体改革は国のかたちをどのように変えるか」を連載しています。2013年8月18日号(1608号)に掲載した、第15回 年金・少子化対策はどうなるか――社会保障制度改革推進法案を読み解く(その10)、を転載します。一部修正しています。
社会保障制度改革推進法は、第9条で、税と社会保障の一体改革を具体化するための新たな仕組みを作りました。「閣議において決定された社会保障・税一体改革大綱その他既往の方針のみにかかわらず幅広い観点に立って」「基本方針に基づき社会保障制度改革を行うために必要な事項を審議するため、内閣に、社会保障制度改革国民会議」「を置く」と定め、国会での論議を抜きにして全面的に社会保障改悪を推進するための「会議」を設立したのです。
「会議」と言っても単に議論を深めるための場ではありません。小泉首相時代に種々の「会議」や「審議会」をつくり、そこでの議論が最終的な結論として、様々な改悪を推進してきたのと同じ手口を使っていると言えます。
この「国民会議」が、8月6日に、「社会保障制度改革国民会議報告書~確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋~」という文書を公表しました。甘利・社会保障・税一体改革担当相は「法制上の措置の策定作業に入り、8月21日までにまとめたい」と具体化に強い意欲を示しています。
この内容については、次回から触れたいと思います。
さて、社会保障制度改革推進法の第5条は、公的年金制度です。「公的年金制度については、次に掲げる措置その他必要な改革を行うものとする」として、次の2点を掲げています。
「一 今後の公的年金制度については、財政の現況及び見通し等を踏まえ、第9条に規定する社会保障制度改革国民会議において検討し、結論を得ること。
二 年金記録の管理の不備に起因した様々な問題への対処及び社会保障番号制度の早期導入を行うこと。」
年金問題については、「国民会議において検討し、結論を得る」、つまり、「国民会議」の結論がすべてだという仕組みになっているのです。
少子化対策については、第8条で定められています。
「少子化対策を総合的かつ着実に実施していく必要があることに鑑み、単に子ども及び子どもの保護者に対する支援にとどまらず、就労、結婚、出産、育児等の各段階に応じた支援を幅広く行い、子育てに伴う喜びを実感できる社会を実現するため、待機児童(保育所における保育を行うことの申込みを行った保護者の当該申込みに係る児童であって保育所における保育が行われていないものをいう。)に関する問題を解消するための即効性のある施策等の推進に向けて、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする」としています。
いろいろなことをやるのだというようにも読めますが、結局、「待機児童」対策が基本だとも読めます。
5月20日に、横浜市の林文子市長が「待機児童ゼロ」宣言を行いました。政府は、横浜市をモデルにした「待機児童解消加速化プラン」をだしています。しかし、その内容は「新設の認可保育所144園中6割近い81園が株式会社設立です。そのうち46園は園庭の面積基準の緩和をうけ、ビルの高層階やマンション内、鉄道の高架下の認可保育所もつくられています」(8月9日付「赤旗」)というのが実態です。結局、何を狙っているのかは明らかではないでしょうか。
次号から、「社会保障制度改革国民会議報告書」を中心に述べていきます。