地方政治新聞「民主香川」に、「税と社会保障の一体改革は国のかたちをどのように変えるか」を連載しています。2013年6月16日号(1602号)に掲載した、第13回 介護保険制度はどうなるか――社会保障制度改革推進法案を読み解く(その8)、を転載します。一部修正しています。
社会保障制度改革推進法案の第7条は、介護保険制度で、「政府は、介護保険の保険給付の対象となる保健医療サービス及び福祉サービス」の範囲の「適正化等による介護サービスの効率化及び重点化を図る」としています。
厚労省のいう「適正化」「効率化」とは、サービス範囲の縮小、削減ということになります。
2012年4月の介護報酬の改定時に、ホームヘルパーの「生活援助」の基準時間を60分から45分に縮めました。2013年3月に公表された、全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)傘下の事業所アンケート調査によれば、「訪問介護(生活援助)の改定による支援時間の短縮は、家事やコミュニケーションの支障など、利用者・家族の日々の生活に新たな困難」をもたらしたとしています。
具体的には、「調理や買い物の時間がとれず、配食や惣菜で対応」「時間内の洗濯は1 回になりシーツ等の洗濯が出来ない」「掃除が後回し」「トイレ掃除や布団干しが出来ない」などの事態が報告されています。
5月15日に開催された、第44回社会保障審議会・介護保険部会では、「主な議論の整理」として、いくつかの重要な論点が明示されています。
基本的な考え方として、「地域の実情に合わせて、財源と事務権限においてある程度包括的に市町村が動けるような制度が求められる」としています。地方分権一括法により、国内ならどこへいっても同じサービスが受けられる「ユニバーサルサービス」から、もさまざまな分野で「地方独自」の方式が可能になっています。介護の世界にも、地方により制度が異なることを前提とする考えが持ち込まれようとしています。地方独自の優れたサービスという意味ではありません。自治体に金がないのでサービスも低くなる、ということになりかねないのです。
「高齢者を一律に弱者として捉えず、その所得に応じて利用者負担の見直しも考えなければいけない」「要介護度、その重要性に応じた自己負担も検討する」としています。
具体的には、「要支援1、2への給付を介護保険の対象から除外する」「見守り、配食等の生活支援を介護保険の対象から地域支援事業に移行させていく」とされます。
要支援1と2を合わせると約150万人で、介護認定者の4分の1を超えます。介護保険からは切捨てられ、地方によってはサービスがおざなりということになりかねません。
さらに、財務相の諮問機関である財政制度等審議会では、1割の利用料は医療費の3割負担に比べ低すぎる、施設入所者も重度に限るべき、などの議論も出ています。
介護の分野にもさらなる改悪が準備されています。