(第577回 5月28日 )
協同組合 香川合同計算センター 速報に「社長の健康シリーズ」を連載しています。2013年5月号に掲載したものを編集しました。
「ヘリコバクター・ピロリ」という名前の細菌(以下、ピロリ菌)をご存知でしょうか。胃の中には胃酸という強い酸があるため、細菌が住むことはできないと考えられていました。
1982年にオーストラリアの研究者が、胃の粘膜の中に細菌がいることを報告してから、ピロリ菌の存在が知られるようになりました。その後の研究により、ピロリ菌は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の発生や胃がんにも関連があることがわかるようになりました。
日本では、上下水道が完備していない、水事情が悪かった時代に生まれた人(私もその一人ですが)では感染率が80%程度ですが、最近の若い世代では欧米と同程度になっています。このピロリ菌を取り除くのが「除菌(じょきん)療法」です。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発率は、除菌療法が成功すると10分の1程度になります。早期胃がんの治療後、3年以内に新しい胃がんが発生する率は3分の1になると言われています。
これまでは、ピロリ菌の検査や除菌療法は胃潰瘍や十二指腸潰瘍の患者などが対象でしたが、今年の2月中旬から、内視鏡で慢性胃炎と診断された患者に、適応が拡がりました。
しかし、「慢性胃炎にも治療が拡大された」と単純に理解している方もいるようです。
あくまで、内視鏡検査(胃カメラ)で慢性胃炎と診断する必要があります。バリウムの検査や医師の診察だけで診断された場合には適応がありません。
これからは検診の季節です。胃カメラを受ける機会があれば、事前にピロリ菌の検査について、医師に相談してみてはいかがでしょうか。
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