(第573回 5月14日 )
地方政治新聞「民主香川」に、「税と社会保障の一体改革は国のかたちをどのように変えるか」を連載しています。2013年3月17日号(1593号)に掲載した、第10回 医療保険制度はどうなるか(2)――社会保障制度改革推進法案を読み解く(その5)、を転載します。一部修正しています。
さて、社会保障制度改革推進法案(以下、「推進法案」)の第6条は、医療保険制度に関する内容です。その第二項は「医療保険制度については、財政基盤の安定化、保険料に係る国民の負担に関する公平の確保、保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等を図ること」とあります。
「財政基盤の安定化」とは、何を意味しているのでしょうか。財務相のホームページを見るとよくわかります。「消費税引き上げの理由」として、「消費税は毎年10兆円程度(注)の税収が続いており、税収が経済動向に左右されにくく安定した税と言えます」(注:地方消費税を除く4%分)と書いてあります。医療保険財政を消費税で賄うということです。
「国民の負担に関する公平の確保」には2つの意味があると思います。
2010年12月に開催された高齢者医療制度改革会議の最終とりまとめで、後期高齢者医療制度の廃止にあたり次の点を示していました。「現役世代と同じ制度に加入する」「高齢者の保険料の負担率を見直す」、つまり、後期高齢者医療制度が年金から保険料を引き落として基本的にすべての高齢者から保険料を徴収する制度を少し手直しして「公平に保険料を負担する」という意味です。
もう一つは「国保の財政運営の都道府県単位化を実現」(最終とりまとめ)と、道州制への移行を前提にしているという点です。
一番問題のあるのが、「保険給付の対象となる療養の範囲の適正化」です。厚生労働省の「適正化」という用語は、常に「制限する」という意味を示します。
次の点が焦点になるのではないかと思います(「全国保険医新聞」2013年1月25日号を参考にしました)。
- 風邪などを「軽い」疾病として保険給付から外す
- 風邪薬は保険では出せなくなる制度です。ビタミン剤の使用制限はすでに行われています。
- 医療費が一定額以下は給付しない保険免責制の導入
- 医療費が一定額以下の場合は、保険が効かず全額自己負担となる制度。
- 保険適用医薬品で市販類似薬は、窓口負担を増やすか、保険給付から外す。
- 便秘薬や漢方薬など、効果が似ているものが対象になります
- 先進医療(いずれ保険適応とすることを前提にして、保険診療と自由診療を同時に行える制度)を制限し、混合診療の状態に留め置く
- 先進医療のうちいずれは保険適応になる予定のものを留め置く
- 給食給付を原則、自己負担化するスイッチOTCの促進(医療用医薬品の一般用医薬品への転用)
- 最近も抗アレルギー剤が、病院を受診しなくても薬局で買えますと、盛んにCMが流れています
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