あなたにもあげたい 笑顔 健康

TOPヘ

香川医療生活協同組合

TPPで医薬品の安全性は守られるのでしょうか

(第562回 3月12日 )

 前回、「薬剤の値段、薬価を国で定めるのは日本の医療保険制度の根幹です」と書きました。では、薬の値段はどのようにして決まるのでしょうか。

 2010年6月の中医協(中央社会保険医療協議会)に「現行の薬価基準制度について」という資料が提出されています(厚労省のHPでは、2011年3月2日の第188回中医協総会資料として掲載)。

 それによると、「同じ効果を持つ類似薬がある場合には、新薬の1日薬価を既存類似薬の1日薬価に合わせる」つまり、1錠50円で1日3回なら1日薬価は150円ですが、これと同じ効果を持つ薬で1日2回服用する薬なら1錠75円にする、というものです。

 ここで、効果の出方が全く新しい(新規の作用機序を持つ)、有効性や安全性が高い、病気の治り方が明らか(治療法の改善が客観的に示されている)の3点を満たせば「画期性加算」として70~120%加算され、2点なら「有用性加算Ⅰ」として35~60%加算されます。

 その他、病気になる方が少ない(希少)疾病の場合の市場性加算、小児加算などがあります。希少疾病の場合は儲けが少ない、小児の病気で数が多くなければ企業が作りたがらない可能性があるので加算をつけておくという仕組みです。しかし、希少疾病に対しては、本来国が責任を持って薬剤を開発する仕組みを作るのが本道だと思います。

 ともかく、やや複雑な仕組みで薬価が作られている訳です。

 この仕組みに、2010年4月から新薬創出加算(正確には、新薬創出・適応外薬解消等促進加算)が設定され「革新的な新薬の創出や適応外薬の開発等を目的に……市場実勢価格に基づく算定値に加算し、薬価引き下げを緩和」することになりました。

 これまでにない効果が認められたら薬の値段を高く設定する、薬価収載後15年間は新薬の値段の引き下げ幅を小さくする、というものです。

 実例をあげます。てんかんのけいれん発作を抑える「ゾニサミド」という薬があります。1989年ころから使用されている薬剤で、1錠100mgです。成人の場合通常1日200~400mg、最高量は600mgとされています。1錠(100mg)の薬価は35円80銭です(2012年4月)。

 ところが、この薬剤が少量でパーキンソン病に効くことがわかってきました。他の薬剤との併用で使用するのですが、1錠25mgで1084円90銭という薬価がついています。単純計算でいえば100mgあたりの価格が121倍になったことになります。「画期的」な薬剤であることは認めますし、スーパーの肉の値段のようにグラムいくらの世界ではないのはわかっていても、本当にこれで良いのかという気がします。この薬価について社会的な問題になったにもかかわらず、中医協で議論された記録はありません。

 これ以外のルールでは、海外の薬価の平均値が薬価算定の資料として用いられています。ここに口を挟もうというのが、TPPです。日本の皆保険制度を守るためにも、TPP参加には絶対に反対です。

 ※下記のHPを参照ください。

 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000136yg.html
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000136yg-att/2r9852000001372p.pdf


関連項目へ 矢印 "飛来峰"バックナンバー

TOPへ 香川医療生活協同組合
フッターのライン