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香川医療生活協同組合

生活保護制度を考える(4)- 今、ニッポンの生活保護制度はどうなっているのか

(第557回 2月12日 )

 地方政治新聞「民主香川」に、「税と社会保障の一体改革は国のかたちをどのように変えるか」を連載しています。2013年1月20日号(1587号)に掲載した、第8回 生活保護制度を考える(下)――社会保障制度改革推進法案を読み解く(その3)、を転載します。

 総選挙が終わりました。2012年12月18日の東京新聞は「小選挙区で自民党候補の名を書いたのは全有権者の約4分の1、比例代表に至っては15.99%だった。自民党の勝利は、必ずしも民意を反映したものではない」「自民党の得票率は小選挙区が43.01%。比例代表は27.62%。ただし、これは投票した人の中での比率だ。 全有権者に占める比率は24.67%、比例代表は15.99%となる。選挙区でも比例代表でも自民党候補や党名を書いた有権者は『少数派』だ」と報じました。

 「虚構の圧倒的多数」というのが実際だと思います。

 この選挙で自民党が示した「公約」の中の社会保障の項「生活保護の見直し」には、「『手当より仕事』を基本にした自立・就労促進、生活保護費(給付水準の原則1割カット)・医療費扶助の適正化、自治体における現金給付と現物給付の選択的実施など抜本的な見直しを行います」とあります。

 生活保護の給付水準が下がると、住民税の非課税限度額が下がります。住民税の課税範囲が変わると、インフルエンザの予防接種の無料制度など、住民税非課税が負担軽減の基準になっている医療・介護など多くの場面で負担が強化されます。介護保険料、保育料、一部の自治体での国民保険料の減免など、直接的に影響がでます。医療費の自己負担の月額限度額でも変更になり負担増となる人も出てきます。

 生活保護の問題は、「所得の低い人」「経済的に困窮した人」だけの問題ではない、すべての国民に関わるのです。

 グローバル・スタンダードという言葉がよく使われます。世界の中でみると日本の生活保護制度はどう見えるのでしょうか。

 日本の生活保護受給者の最新データは2012年9月の概数ですが、過去最高の213万人を超えています。しかし、実は1951年には当時の過去最高の204万人が利用していました。当時の人口は8500万人弱でしたから2.4%に相当します。現在は人口が増えていますから1.6%で、利用率は減っているのが正確なところなのです。

 先進諸外国との比較でみると、2010年のデータでは、ドイツ9.7%、イギリス9.3%、フランス5.7%、スウェーデン4.5%で、日本の利用率が低いのが際立っています。問題は、本来利用すべき人が利用していない(利用できていない)ところにあります。利用する資格があり実際に利用している人の割合を捕捉率(ほそくりつ)と言いますが、これが極めて低いのが日本の問題です。欧米諸国が80~90%と言われますが、日本では20%以下とされます。

 「生活保護」の定義は国によって異なりますから、OECD(経済協力開発機構)の基準でみると、「貧困関連社会支出」は高齢、保健、障害・労災、失業、住宅、生活保護その他などの9分野に分けられます。

 日本の生活保護制度では、医療も高齢者介護も「生活保護」制度に含まれますが、ドイツやイギリスでは「生活扶助」に特化した制度で所得保障の役割を担っています。そもそもイギリスでは医療保障は存在しません。NHS(国民)保健サービス)制度があり、医療は原則無料なのです(年齢により薬剤費負担が存在する)。

 こう見ると、日本の制度がいかに貧弱なものかがよくわかります。この制度をさらに切り詰めようというのが「税と社会保障の一体改革」であり、新政権の政策なのです。

 ※この問題の理解には、日本弁護士連合会が作成した「今、ニッポンの生活保護制度はどうなっているの?」というパンフレットが役立ちます。

http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/booklet/data/seikatuhogo_qa.pdf


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