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香川医療生活協同組合

生活保護制度を考える(2)-大阪市で実際に起きていること

(第553回 1月25日 )

 地方政治新聞「民主香川」に、「税と社会保障の一体改革は国のかたちをどのように変えるか」を連載しています。2012年12月16日号(1584号)に掲載した、第7回 生活保護制度を考える(中)――社会保障制度改革推進法案を読み解く(その2)、を転載します。

本欄の第547回(2012年12月25日)に、生活保護制度がターゲットになっていることに触れました。大阪市内で現在起きていることを、大阪府保険医協会の田端理事の報告(注)から引用します。

 大阪市西成区は65才以上の高齢化率が35%と群を抜いて高く、生活保護受給者は人員で24%、世帯で35%です。一方、生活保護費に占める医療扶助の割合は全国平均では47%ですが、西成区では44%で全国平均より低く、10年前と比べると13%減少しているのが実態です。

 大阪市西成区では、橋下市長の提案する「西成区特区制度」の一つとして「医療機関等登録制度」が打ち出されました。生活保護受給者が受診する医療機関を各科ごとに1つ、薬局も1つと限定し「登録証」に記載された医療機関以外は受診できない、他の薬局からは薬ももらえない、というとんでもない制度でした。大阪府保険医協会などの抗議の中で当局は「生活保護患者の受診を抑制しても構わない」などの暴言を吐いたそうです。

 最終的には「通院医療機関等確認制度」と変更されましたが、「新たな医療機関を受診する時には申し出る」「医療券の発行時には確認証を持参する」「薬は確認証に記載のある薬局でもらう」などと記載されており、この制度が大阪市全体、大阪府からさらには全国に拡がるのではないかと懸念されています。

 大阪市は「医療扶助を狙った不適切な医療機関を排除する」としていますが、市の調査結果でみても、生活保護の不正受給で逮捕された33件中医療扶助関係は2件、不正請求が疑わしいと調査した16医療機関中明らかな不正と断じることができたものは1件もありませんでした。

 これまで不正事件があったのは事実ですし、それは法が適用されるべきですが、一部の不正を全体のものであるかのように描きだし、制度の改悪をおこなうことは許せないと思います。

 財務省は10月23日「13年度予算編成で、生活保護費の給付水準を引き下げる方向で見直す方針を固め厚生労働省と調整に入った」と報じられました。医療機関の窓口で医療費の一部をいったん自己負担する制度の導入や、生活費や住居費の減額などが提案され、厚労省は反発しているそうです。

 しかし、実は、生活保護費(最低生活費)は物価に基づき毎年見直しが行われています。デフレで物価が下がれば、それに応じて生活保護費も減額されているのです。2012年は5年に一度行われる大幅な基準見直しの年に当たるので、絶好のチャンスとして厚労省も大幅引き下げを狙っているのではないか、という見方もあります。

 生活保護制度に関する問題は、一部の問題ではありません。憲法25条に定められた「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という、国民全体の問題なのです。

 注:月刊保団連2012年10月号「大阪市西成区の『特区構想』とは何か-生活保護受給者に対する『医療差別』全国化への危惧」


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