(第551回 1月15日 )
香川県保険医協会会報No.343(2012年11月20日)の「診察室の窓」欄に、ネパール訪問記を掲載しました。2012年9月〜10月にかけて連載した内容のまとめ的な文章です。一部修正して掲載します。
2012年8月にネパールに行ってきました。
ネパールには、非営利のNGO(非政府組織)であるフェクト・ネパール(フェクトと略)という団体があります。Public Health Concern Trust(Phect) Nepalの略で、1991年に「医療を必要としている人に必要な医療を」提供する目的で設立され、首都カトマンズに125床の「モデル病院」を持っています。2006年4月に王政が倒された「カトマンズの春」には、デモや銃撃戦で負傷した市民を不眠不休で診療にあたり、大きな信頼を勝ち取りました。
ネパールには日本のような医療保険制度はありません。フェクトに加入するとモデル病院の医療費は半額になりますが、すべて未収金になる訳ではなく、小口医療保険を活用し、全額ではないが回収しています。
ネパールでは、年間1000人の医師養成が行われますが、6割が海外に流出します。地方に行くと治安上の問題や経済的な事情があるため、国内に残った医師や看護師も大半が首都カトマンズで仕事に従事しているため、地方では十分な医療が提供できない、という事情もあります。
フェクトは、地方で働く医師を養成するために医科大学を作り、実習病院を建設しようとしています。10月には新病院が完成し大学をつくるということでしたが、最新の情報ではまだまだのようです。
これを「いい加減」と表現することも可能ですが、そもそも時間の感覚が日本とは違います。日本では、面会の時間を約束する時に、9時では少し早いが9時半では遅いという場合、9時15分頃ということになりますが、ネパール(だけではありませんが)で日本式の時間の約束をしたら、「なぜそんなに細かいこというのか」と不思議がられます。実際、ホテルに10時に迎えに行くと言われても優に1時間は待たされました。
しかし、日本でも江戸時代には、夜明けから日暮れまでの時間を6等分して一刻(いっとき)としていた訳で、日本社会があまりに忙しすぎるのかもしれません。
「地方で働く医師養成」という点では、日本も同じ課題を抱えています。ネパールの取り組みに注目したいと思います。
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