これまで、民主党が政権を奪取したときの公約をなぜ投げ捨てたのかについて、その背景を見てきました。
今回から「税と社会保障の一体改革」の中身について触れたいと思います。
8月10日に成立した「消費税法の一部改正を含む『社会保障と税の一体改革関連法』」は、全部で8つの法律からなります。まず、中心部分である「社会保障制度改革推進法案」(以下、この連載では「推進法」と略します)の中身を見ていきたいと思います。
「推進法」は短い法律で、第1章「総則」、第2章「社会保障制度改革の基本方針」、第3章「社会保障制度改革国民会議」、そして「附則」からなります。
一見して奇妙に思われるのは、最後の「附則」です。本来、附則とは、法律がいつから施行されるのか、時限立法ならいつまで適用されるのか、詳細な規定は別途定めるとか、法律の内容と直接関係のない文字通り「附属」的なことを記載するものです。ところが、「推進法」の附則は、第1条(施行期日)の次に、第2条(生活保護制度の見直し)が記されています。
第2章の「社会保障制度改革の基本方針」には、公的年金制度、医療保険制度、介護保険制度、少子化対策の4条からなります。生活保護の見直しが必要なら、第2章に記載すべきものです。生活保護制度について、何らかの理由で途中からむりやり押し込まれたためだと思います。
しかも、見直しの内容は、不正受給への「厳格な対処」、「給付水準の適正化」、「就労の促進」などの「見直し」というのですから、不正受給がはびこっており、給付切捨てが必要だと言わんばかりの内容になっています。
しかし、厚労省の資料によると、「不正」受給(すべてが不正とは言い切れないのでカッコを付けています)の2010年度の実態は、件数は2万5千件で1.8%、金額は約128億円で0.38%です。確かに、問題のあるケースについてきちんと調査をしてただすのは当然ですが、不正受給を取り締まれば「本当に必要な人にきちんと届く」(岡田副総理)ようになるのでしょうか?
日本の生活保護制度の問題は、本来生活保護の対象となるべき低所得者層に適用されていないという、捕捉率の低さです。
唐鎌直義・立命大教授によれば、国民生活基礎調査から算出した生活保護基準世帯は1200万世帯、実際に生活保護を受給しているのは150万世帯で、捕捉率は12.5%になるそうです(2007年度)。英国の生活保護制度にあたる公的扶助(所得援助)制度の捕捉率は83%(2008年)ですから、大きな違いがあるといえます。
日本の生活保護制度は、「本当に必要な人」に届いていないのが実情なのです。
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