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香川医療生活協同組合

社会保障における国の責任を放棄する「一体改革」の理念について

(第545回 12月18日 )

 地方政治新聞「民主香川」に、「税と社会保障の一体改革は国のかたちをどのように変えるか」を連載しています。2012年9月16日号(1575号)に掲載した、第4回 社会保障における国の責任を放棄する民主党の理念と政策、を転載します。

 11月に掲載する予定でしたが、11月中旬に一気に国会解散となり掲載を見合わせてきたものです。政権が変わってもこの文書の視点は大事なので掲載します。なお、この原稿は、9月上旬に執筆したものです。

 第180通常国会が閉会し、民主党・自民党の代表選・総裁選が始まりました。マスコミは、誰が出るとか出ないかという、プロ野球のストーブリーグのような報道に終始しています。

 政治の大きな動きがない今の時期こそ、社会保障のありかた、外交問題、基地やオスプレイ、原発などじっくり掘り下げた報道があるべきですが、残念ながら期待薄だと思います。

 さて、与党である(いつまで与党でいられるかは別にして)民主党の政策を振り返ってみます。民主党は政党の離合集散が激しく行われる中でできた政党で、正確な歴史の記載は大した意味を持たないので、1998年に結成された民主党を対象にします。

 前回も書きましたが、民主主義社会なら政党に綱領があるのは常識ですが、民主党には綱領がありません。財界では民主党に近いと言われる経済同友会が5月17日に「党綱領を制定し、代表選挙や連立協議のあり方を明確にするよう求める提言」をしているほどです。

 1998年の第1回民主党大会で決めた「基本理念」によれば、「経済社会においては市場原理を徹底する一方で、あらゆる人々に安心・安全を保障し、公平な機会の均等を保障する、共生社会の実現をめざします」とあります。「基本政策」では、「自己責任と自由意思を前提とした市場原理を貫徹することにより、経済構造改革を行う」とあり、まぎれもない構造改革推進派の立場を表明しています。弱肉強食を容認する立場では、「あらゆる人々に安心・安全を保障」するのは無理なことです。

 社会保障分野の基本政策は、「『普遍』『個人』『自立支援』を原則とした社会保障制度を構築して国民の将来への不安を解消する」となっています。

 「普遍」の意味は不明ですが、「個人」が原則というのは、結局自分で責任を持つということにほかなりません。「自立支援」というのは、自立できない場合には支援するという意味ですから、社会保障制度は国が責任を持って行うものではない、ということになります。

 医療については、「市場原理をも活用しながら、情報公開を徹底し、抜本的な制度改革を行う。高齢者医療は税を主たる財源とする」となっています。情報公開を徹底するのはおおいに賛成ですが、医療に市場原理を活用するなら政府の公的責任はなくなります。医療の営利化に道を開く混合診療導入につながるでしょう。

 税を主たる財源というのは消費税を充てるということです。野党時代あれほど反対した「後期高齢者医療制度」に対し、与党になったらあっさり態度を変え、「税と社会保障の一体改革」を行い消費税を社会保障にあてるという政策を貫徹したのは、何のことはない、最初から言っていたことということになります。そういう意味では「一貫している」のですが。


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