(第540回 11月27日 )
香川県保険医協会会報No.342(2012年10月20日)の「主張」欄に、「社会保障制度の改善につながる選択を」と題して、以下の文章を掲載しました。情勢がかわり総選挙間近となりましたが、内容的には間違っていないので、一部修正して掲載します。
民主党・自民党の代表(総裁)選が終わり、総選挙実施時期を巡り駆け引きが始まっています。選挙の時期はわかりませんが(注:この文章は10月中旬に書いたものです)、消費税増税、社会保障のあり方が選挙の重要な争点になるのは間違いありません。その論点について触れてみたいと思います。
まず、消費税増税の問題です。日本医師会の調査や医療経済実態調査によれば、消費税5%の段階で、医療機関の年間の「損税」は、医科1件当たり無床診260万円、 有床診562万円、病院1億円弱、歯科の個人立診療所は40万円とされます。これが10%になれば、設備投資規模が大きい病院の経営が困難となります。診療所経営にも大きな影響が及ぼし、地域医療の「崩壊」を促進することになります。
政府はこの「損税」に対して「診療報酬で対応する」としていますが、消費税増税に伴い診療報酬があがれば、結局国民負担が増えることになります。保団連は、医療を行ううえでの仕入れにかかる消費税を還付する「ゼロ税率」を要望しています。
社会保障制度改革推進法案は、総則の第2条「基本的な考え方」の中で、社会保障制度を「家族相互及び国民相互の助け合いの仕組み」にかえると宣言しています。社会保障制度は、憲法25条に定められた国民の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するための国の責務として定められたものです。「相互の助け合い」なら共済制度に過ぎません。
医療保険制度についても、「保険給付の対象となる療養の範囲の適正化」を図るとして、保険医療の範囲の制限を打ち出しています。
また、附則第2条に「生活保護制度の見直し」が追加されました。本当に見直しが必要なら、第2章「社会保障制度の基本方針」にはいるはずですが、途中から無理矢理文言を押し込んだためと思われます。年間120億円を超える不正受給への対応が取りざたされていますが、生活保護費の総額3.3兆円の0.4%弱にすぎません(2010年度の数値)。不正はただすべきですが、高松市のように窓口に警察関係者を常駐させるのではなく、適切に利用できるような配慮が必要だと思います。
こういった観点から、各党・候補者の公約を見て社会保障制度の改善につながる賢明な選択が望まれます。
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