(第533回 10月23日 )
地方政治新聞「民主香川」に、「税と社会保障の一体改革は国のかたちをどのように変えるか」を連載しています。2012年7月15日号(1569号)に掲載した、第2回 社会保障を「助け合い」に変質させる「一体改革」、を転載します。一部編集しました。
第511回(7月10日)で「情勢は混とんとしており」「政治情勢が大きく変わることもあり得ます」と書きましたが、その後民主党が分裂しました。消費税増税だけが先行する展開となっていますが、今後どうなるかはわかりません。
しかし、政治がどのように動いても、厚労省がいったん決めた方針は、いずれは表面に出てくるものですから、「税と社会保障の一体改革」についての連載は予定通り続けていきたいと思います。
2011年5月12日に、第6回社会保障改革に関する集中検討会議が開催されました。菅内閣(当時)が、消費税増税による社会保障改革(税と社会保障の一体改革)を具体化するために開催した会議です。
この会議で、厚労省は「社会保障制度改革の方向性と具体策」という文書を提案しました。副題は「『世代間公平』と『共助』を柱とする持続可能性の高い社会保障制度」です。この方針の「射程(想定時間軸)」は、ベビーブーム世代が高齢期を迎える2015年から2025年を念頭に置いているといいますから、政権の形がどうなろうと、10年後の社会保障の形をどう変えていくかという、大変重大な方針だといえます。
この文書の本文は19ページですが、「厚生労働省案解説」と題する「全員で参加して支える社会保障の安心」という6ページの短い文書が添えられています。「このカバーレポートは、その検討の経緯や検討結果の趣旨をお伝えするものです」とあり、これを読むと厚労省の目指す方向性がよくわかります。
まず、社会保障の「定義」として3点あげています。(1)自分で働いて自分の生活を支え、自分で律して自分の健康を維持する。(2)病気になったら国民全員で助け合ってリスクを分かち合う。(3)自立できないほどの困窮に陥った場合に「政府が最低限の生活を保障する」。そして、国民と政府は相互に支えあうものだと、説きます。
冗談ではありません。社会保障とは、憲法25条に記された「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という内容に基づいて国が保障する、国民の生きる権利です。
個人の生活のレベルでいえば、自分の健康は自分で守らなければいけないでしょうが、健康を「維持する」ための政策を作るのが国の責任です。「自分で律して自分の健康を維持する」というのは、病気になるのは自己責任であるという「健康の自己責任論」「疾病の自己責任論」にほかなりません。
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