野田首相は10月17日のインタビューで、環太平洋経済連携協定(TPP)について、「アジア太平洋地域はこれから成長のエンジンとなり、高いレベルの経済連携は日本にとってプラスになる」と、TPP参加に積極的な姿勢を示しました。
この発言に応じて、マスコミはTPP参加を期待する社説を掲載しています。
「早期参加を表明せよ」と題する読売新聞の社説は(10月19日)、市場開放し、海外の活力を取り込んで経済成長を実現。サービス、政府調達、知的財産など21分野に及ぶ、新たな貿易・投資ルールになると主張しています。
TPP参加は、関税撤廃にとどまりません。医療現場にも大きな影響を及ぼします。
まず、労働力の自由化です。看護師、介護労働者の規制緩和が行われ、製造業でみられるように、安価な労働力として利用されたなら、医療・介護の現場はますます問題が大きくなります。
米国には国民全体をカバーする医療保険制度は存在しません。米国の生命保険会社が今以上に日本に参入するためには、国民皆保険制度が邪魔になります。医療保険制度そのものが、議論の対象になるでしょう。
昨秋の行政刷新会議の論議では、「真に国民に必要な医療を整理し、公的保険の適用範囲を再定義する」と踏み込み、保険外併用療養費の一部を届出制に変更して、原則禁止の混合診療をなし崩し的に拡大する議論が行われていました。
オーストラリアと米国の自由貿易協定交渉の中では、オーストラリアの薬価制度(特許の切れたジェネリック医薬品を参考にした価格制度)が問題にされました。
6年前に米国に生命倫理の調査に行ったときに、自由に医療機関が選べ、医療保険制度が整備されている「日本はすばらしい。絶対に米国のまねをしてはいけない」と、ある方に言われたのを思い出します。
国民皆保険制度が崩される、TPP参加には反対すべきだと思います。
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