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香川医療生活協同組合

高松市内の救急医療を考える

(第466回 12月2日 )

 地方政治新聞「民主香川」に連載している、「「医療改革法」は医療をどう変えたか――医療現場からの報告」(第21回)です。2011年8月21日号(1536号)に掲載した「いま、医療はどうなっているのか(4)」を編集しました。 

 高松市内の救急医療について考えてみたいと思います。

 昨年の飛来峰にこう書きました。「ほぼ同時間に救急隊から受入れ要請があり、一つを受入れると直後の要請は断わらざるをえない場合もあります」(2010/12/03:第385回)「高松市内の病院でも、土曜の夜などは救急搬入要請の電話が2ケタかかってくる事も珍しくありません」(12/14:第389回)

 ここで述べた「市内の病院」とは高松平和病院のことです。18時頃から翌8時過ぎの時間に、多い日には10本以上の救急受け入れ要請の電話がかかってきます。

 昨年12月のある土曜日には、11本電話がかかってきました。受け入れたのは5本、断った6本中、救急患者の対応中が2本、救急隊との電話中が1本、他は脳外科や集中治療室が適当と思われる病状等が理由でした。

 県立中央病院、高松日赤病院、屋島総合病院、社会保険栗林病院、KKR高松病院、県済生会病院、高松平和病院の7病院の、昨年11月の時間外救急受入れ(18時から翌8時)に関する統計によれば、救急車の総台数は434、受け入れは中央病院と日赤病院を合わせ56%、平和病院は11%でした。

 この数字の中には、脳外科疾患や心筋梗塞などの循環器救急が含まれていますから、それらの疾患を除くと、平和病院の占める割合は大きくなります。自家用車などでくる患者を含めた統計では、循環器内科を除くその他の内科では29%、小児科では40%を高松平和が受け入れています。

 小児科受け入れが多い理由は簡単です。新生児や明らかな重症疾患でなければ、当直医の所属科にこだわらず極力受け入れているからです。

 それでは、なぜ内科救急が一つの病院に集中するのか、救急隊からなぜ次々と電話がかかってくるのか、ということです。救急隊と電話中に他の救急隊から電話が入るというのは日常茶飯事です。これは、高松市内の救急医療に関わる司令塔にあたる部署がないか、あっても殆ど機能していないからだと思います。

 こういった実態が明らかになるエピソードを聞きました。一人暮らしの男性の方が部屋で倒れているという救急隊からの電話がありました。男性ベッドがない状態でしたが、一人暮らしで困っているだろうからとりあえず診察してから入院の判断をしようと受け入れました。入院が必要なので、救急隊に男性が入院可能な病院を探してほしいと要請しましたが、拒否されました。救急時なのだから協力してほしいと懇願しましたが、「入院ベッドを探すのは、救急車を受け入れた病院の責任だ」というのが、救急隊の言い分でした。

 当直医がベッドを探すために1時間以上も電話をかけ、医療を中断するというのはどう考えてもおかしいと思います。

 「今夜は、内科医が当直しているのは、中央病院と平和病院だけ」と言われた医師もいます。「そんなことがあり得るのか」というと、ある医師が、「消化器医」「循環器医」と救急隊に報告しておけば、発熱やめまいは「内科医」が当直している病院に行くことになるからだ、と種明かしをしてくれました。

 「医療崩壊」とはいいませんが、システムの面でもモラルの面でも問題は大きいと思います。

 注:1度に複数患者の受け入れ要請もあるので、かかってきた電話の本数で表現しています。


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