先月行われた香川県保険医協会総会の、記念講演後の質疑応答に注目しました。
ある町の福祉保健課長が「死者の身元はたいていわかる。借金が残っているときの遺骨の受け取り交渉をするのが私の役目」と述べました。
また、「声かけや見守りが大事。電気がついた、洗濯物を取り込んだ、水やりをしている、『大根とれたで』と持って家に入ることができる、隣近所がつながりを持つ、個人情報は共有したほうが幸せなのだ」と、町の取り組みの報告と、個人情報保護法の問題点を指摘しました。
一見元気な高齢者に気を付けるようにしています。虚弱老人なら、介護保険を利用してはどうか、民生委員が医療機関に相談に来ることもあるなど、何らかの対策が取られることがあります。
元気だと家庭状況を聞くこともないし、「個人情報保護法」の壁があり、問い合わせも難しくなります。
元気な高齢者へ、失礼な質問だがと前置きをして「もし、あなたが今ここで倒れたら、誰に電話をすればいいのですか」と聞いています。通院時の交通手段も聞くようにしています。自分で運転できる人はいいのですが(事故をおこすので、よくない場合もありますが)、家族関係がよくわかったり、タクシー代がつらいという経済状況がわかることもあります。
「無縁社会」で描かれた現実は、日本のどこにでも存在します。
一人暮らしで、子供は都会にいる。結局、隣や近所の顔見知りが最も頼れる人だという場合が多いことに気づきます。倒れて困る前に、何らかの手が打てないか、ここに力を入れていく必要があります。
家族関係が複雑だと聞いていた方の子供さんに、病状説明をしたいと電話をかけ、遠方から来てもらいました。認知症が進んでいることを説明し、通院や服薬について相談したところ、「そんなに進行しているのか」と驚くと同時に、兄弟や親せきと相談して対応してもらうことになりました。
超高齢化社会に突入する日本で、医療機関としてできることを模索していきたいと思います。
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