(第433回 6月28日 )
日本医療福祉生活協同組合連合会(医療福祉生協連)が発行する医療福祉生協情報誌comcomの 2011 年6月号のコラム「社会派 しんさつ室 No.15」に掲載された文章を転載します。一部修正しています。
東日本大震災は、直接被災を受けていない、全国の医療機関にも大きな影響を及ぼしました。
内視鏡の製造や補修がストップする、医療機関や介護施設で使用するベッドにも影響がでました。なかでも医薬品に大きな問題がでました。
工場が東北・関東地方にある製薬会社が被災を受けただけでなく、シップ剤に用いるゴム工場や薬剤を入れる缶工場の被災、東京電力の計画停電の影響などさまざまです。
マスコミで話題になったのが、甲状腺機能低下症の治療薬ですが、被災した製薬会社の生産量が全体の98%を占めていたのです。残り2%を製造している会社は別の地域にあり震災の影響はありませんが、突然50倍の量を作ることは不可能です。そこで、ドイツから緊急輸入を行い、当座をしのぐことになりました。
この薬剤は、成分量の違いにより3種類の剤型がありますが、薬価はいずれも1錠9円60銭です。成分量が変わっても値段が同じということは、作っても儲からないということです。今回の問題は、メーカーの責任ではありません。重要な薬剤が事実上1つのメーカーだけに生産が任されている、現在の仕組みに問題があります。
漢方薬やシップ剤のメーカーも被災を受け、供給が不安定になりました。しかし、あるメーカーは茨城県と静岡県に、別のメーカーは栃木県と佐賀県に工場があるため、関東地方が被災を受けても、別の工場で振り替えて生産を行い対応しました。医療機関も長期処方を控え、1回あたりの処方量を少なめにするなどにより、薬がなくなる事態は防ぐことができています。
集約化することによりコストダウンができます。しかし、自然災害が起きると、こういった問題点がでてきます。薬剤を安定供給する仕組みが問われています。効率優先という考え方も見直すべきだと思います。
生産、流通を始め、さまざまな仕組みについて考える必要があるのではないでしょうか。
福島県の郡山医療生協から、6月24日に送られてきた写真です。ヒマワリは30cmに育っています。
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