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香川医療生活協同組合

いま、医療現場はどうなっているか(5)

(第419回 4月15日 )

 地方政治新聞「民主香川」に連載している、「「医療改革法」は医療をどう変えたか――医療現場からの報告」(第15回)です。2011年2月20日号(1518号)に掲載した「いま、医療はどうなっているか(5)」を編集しました。

 4番目の問題は、「金」(医療費)です。

 日本の医療費は低いので有名です。

 厚生労働省が最近公表した2008年のOECD加盟国の医療費データでみると、日本の総医療費の対GDP比は8.1%で31カ国中22位です。全体の平均が9.0%、上位10ヵ国の平均が10.9%ですから、10兆円くらい増やしてやっと、「世間(OECD)並み」になります。

 この間、医療費負担増は国民と自治体に押し付けられ、国と事業主の負担は減ってきました。財源別国民医療費を1980年と2003年で比較すると、家計は40.2%から45%に、地方自治体の負担は5.1%から8.5%に増加したのに対し、国庫負担は30.4%から25.6%、事業主は24%から20.9%に減りました。

 保険料の比較でも事業主負担は、協会けんぽ(旧・政府管掌健康保険)の場合4.67%、ドイツでは7.0%、フランスでは13.1%ですから、日本の企業負担は大幅に低い水準です。

 宇沢弘文さん(東大名誉教授)は「社会的共通資本」という考えかたを唱えています。

 「一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置」のことです。

 具体的には、自然環境(大気、森林、河川、水、土壌)、社会的インフラストラクチャー(道路、交通機関、上下水道、電力・ガス)、制度(教育、医療、司法、金融制度)などを指します。

 まさに、医療・福祉は「社会的共通資本」だといえます。

 民主党政権は「税と社会保障の一体化」という言い方で、消費税増税を狙っています。社会保障財源をどう考えるかが、いま問われています。

 民主党が事業仕分けを行いましたが、そこから除かれたものは、軍事費、米軍への思いやり予算、大企業・資産家への優遇税制、政党助成金などです。

 税理士や公認会計士で構成される「不公平な税制をただす会」の試算によれば、不公正税制を是正すると、国税で15兆円、地方税で6兆円の増収が可能だとしています。

 消費税増税がいま必要なのか、という世論を盛り上げていく必要があります。

 保険にしろ税にしろ、制度を持続させるには、誰かが負担しなければいけません。しかし、何の論証もなく「消費税増税ありき」の議論ではなく、本来負担すべき税を負担していないのは誰か、を問題にしていく必要があるのではないでしょうか。

 その点で、いま重要なのは国民保険制度だと思います。

 国保加入者は、協会けんぽや組合健保など他の保険に比べ、20才近く高齢化が進んでいるため病気にかかる人が多い、加入者の年齢は高齢者を除いても10才以上高い、その一方で収入は少なく他の保険の約半分である、という特徴があります。

 また、国保には会社からの補助に相当する援助はなく、収入以外に家族の数や財産にも保険料がかかります。

 ですから、国保にはさまざまな援助の仕組み、国からの財政投入、市町村からの一般財源からの投入の仕組みがなければ成り立ちません。

 国民皆保険が実現した1961年には、国保会計の42.8%が国庫支出金で、1975年には58.5%まで増加していました。1984年の国保法改悪により、国庫負担率が、医療費の45%から給付費の50%に変更されました。

 「医療費」は、3割の自己負担+7割の給付費ですから、「給付費」の50%に変更されると、「医療費」の35%に減少することになります。高額医療費への補助制度があるため実質38.5%になりましたが、その後も、国保事業の事務費や保険料減額措置に対する国庫負担を廃止するなどして、2007年度には25%まで減少しました。

 医療制度を持続可能な制度にするためにも、今こそ「国家財政の基本は社会保障に」の声をあげる必要があります。


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