(第399回 2月1日 )
菅直人首相は1月29日スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で講演し、TPP(環太平洋連携協定)の推進をあらためて表明しました。「貿易自由化か農業の存続か、という二者択一の発想には立たない」と述べましたが、TPPは、1月25日付(第397回)で触れたように、農業だけでなく、医療・福祉を始めとしてあらゆる分野に関連します。
1月26日に、行政刷新会議の「第6回規制・制度改革に関する分科会」が開催され、249項目にわたる規制見直しを提案しました。
基本となる考え方として、昨年の6 月18 日に閣議決定された「新成長戦略」、11月9日に閣議決定されたTPP推進の「包括的経済連携に関する基本方針」を踏まえ、EPA(経済連携協定)を推進するために国内の非関税措置を撤廃・緩和する観点などとしています。要するにTPP推進のための基礎づくりということです。
その中には、「介護福祉士の国家資格を取得した外国人が就労可能となる制度の整備」として、EPAに基づく介護福祉士候補生以外の外国人が我が国の介護福祉士資格を取得した場合、介護福祉士として我が国で就労できるように在留資格を新たに創設すること、として従来のインドネシア以外の国からも参入できる仕組みを作る方針です。
外国人労働者の参入については様々な考え方があるでしょうが、前回述べたように、他の分野と同じく「安価な労働力」として利用され、介護労働者の待遇が低賃金のまま固定される可能性があると思います。
医療・介護の保険の仕組みについては、高齢者の場合、医療と介護が密接に関係していることから、高齢者医療制度と介護保険制度の一元化等も視野に入れ議論する必要があるとし、医療においては技術の進歩が国民医療費の増加要因になるとの特性を踏まえ、公的保険の適用範囲を再定義することが必要としています。
保険の適用範囲を広げるのなら現在の制度の枠内でできます。「適用範囲を再定義する」ということは、適応範囲を狭めることにほかなりません。要するに生命保険などを併用するということです。いまでも新聞・TVで大規模な宣伝を行っている、米国の保険会社に活躍の場を与えることになります。
「医療法人の再生支援・合併における諸規制の見直し」の項では、営利法人の役職員が医療法人の役員として参画することや、譲受法人への剰余金配当等を認める、医療法人が他の医療法人に融資又は与信を行うことを認めるとしており、本来「非営利」であるべき医療・福祉分野への営利企業の参画を認めることになります。
国民への納得いく説明のないままでの、TPPへの無条件の参加には反対です。
規制・制度改革に関する分科会(第6回)については、下記のアドレスを参照してください。
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/subcommittee/0126/agenda.html
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