高齢者医療制度改革会議の「高齢者のための新たな医療制度について(中間取りまとめ)」について前回触れましたが、その後の二回の会議でその内容が、徐々に明らかになってきました。
2013年から開始する予定の新しい国民健康保険制度、実質的な「新・後期高齢者医療制度」は、「75才以上について都道府県単位の財政運営とする」としています。74才以下は市町村国保で運営する訳ですから、後期高齢者医療制度の枠組みはそのまま残ることになります。
厚労省は、5月19日の都道府県知事宛の通知で、国保の広域化に向けて、市町村により異なる保険料を統一するために「保険料の引き上げ、収納率の向上、医療費適正化」などを行い、一般財源化からの繰り入れを「できるだけ早期に解消」することを求めています。
国保会計の累積赤字が約800億円と全国ワースト一の大阪府は、全国に先駆け保険料を統一することを2010年7月に市町村長に提示、世帯あたり平均年2万円アップとなる試算を示しました。その後、年内提案を断念したと報じられましたが、国に対し「市町村国保を都道府県単位へ速やかに一元化するため、高齢者医療にとどまらず、全年齢を対象とした都道府県単位化を図る制度とすること」を要望しています。
新しい制度では、現役で働いていたり、協会けんぽなどに加入している方の扶養家族などを除き、75歳以上の高齢者の約8割を占める約1200万人が、都道府県単位で運営する国保に加入することになります。
しかし、本当の狙いは、橋下大阪府知事の「繰り入れはやめるべき。繰り入れは府下で300億くらいですか」という発言にみられるように、国保会計への市町村の税金繰り入れをやめさせ、住民の保険料負担により運営することです。
厚労省の国保課長は7月の講演で「今回の高齢者医療制度改革は、市町村国保の広域化を進めるための大きなチャンスだ」と強調、「今回の機会をみすみす逃すべきではない。議論への参加を怠り、年末に発車するバスに乗り遅れると当分、そのバスは来ないだろう」と訴えたと報じられています。
全国の市町村の一般会計から国保会計への繰り入れは、年3700億円とされます。広域化により一般会計からの繰り入れをなくし、医療費が増えれば保険料が際限なく上がる仕組みにして、受診抑制を引き起こし、医療費を抑制する仕組みを作ろうしています。
厚労省が2010年5月〜6月に実施した意識調査によれば、新しい医療制度について「若人、高齢者に関わらず、同じ所得水準であれば同じ保険料負担とすべき」という意見が約半数を占めました。一定年齢で別建てにする制度に反対する理由で最も多かったのは「リスクの高い人も低い人も助け合おうという健康保険の本来の理念から外れている」というものでした。
国民の意識は極めて健全で、民主党政権と厚労省の方針は、国民の思いから大きく外れていると思います。
この秋は、「国保」を軸に、社会保障を改善する運動を大きく広げていく必要があります。
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