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香川医療生活協同組合

新たな高齢者医療制度を批判する(上)

(第395回 1月18日 )

 地方政治新聞「民主香川」に連載している、「「医療改革法」は医療をどう変えたか――医療現場からの報告」(第11回)です。2010年10月17日号(1508号)に掲載した「新たな高齢者医療制度「中間とりまとめ」を批判する(上)」を編集しました。

 2010年8月20日に、高齢者医療制度改革会議が、「高齢者のための新たな医療制度について(中間取りまとめ)」を発表しました。後期高齢者医療制度に代わる新たな制度の枠組みの案です。10年末までに最終報告を作成し、11年の通常国会に法案を提出する予定です。

 「中間とりまとめ」は、日本の医療制度について「国民皆保険の下、すべての国民がいつでも、どこでも、誰でも、適切な医療をうけることができる医療制度を実現」したと評価しています。また、国民健康保険制度が「国民皆保険の最後の砦である」としており、いずれも同意できる内容です。

 また、後期高齢者医療制度の問題点として、「75歳に到達した時点で独立型の制度に加入させること」が「多くの国民から差別的な制度と受け止められた」「高齢者の方々の心情に全く配慮することなく、『後期高齢者』という名称が用いられた」という認識も、一致します。

 しかし、後期高齢者医療制度について「一定の利点があった」として、「高齢者の医療費に関する負担の明確化が図られた」と述べているのは問題です。「負担の明確化」というのは、すべての後期高齢者が保険料を負担する現行制度の事で、少額であっても年金から天引きする、最も国民の批判の大きかった内容ですから、評価に値しないことは明白です。

 「都道府県の運営とすることにより財政運営の安定化と保険料の公平化が図られた」と述べています。広域連合を都道府県単位に作りましたが、都道府県が予算面で責任を持っている訳ではありません。現行の国保制度では、一般会計からの繰り入れが可能ですが、広域連合に一般財源はありませんから、医療費が増加すれば保険料を値上げせざるを得ません。社会保険は、国民と自治体・国・(勤労者の場合は企業も)がお金を出しあって責任を持つ制度です。自治体が財政的に責任を持たない制度は、社会保険のあり方から大きく逸脱しています。

 さらに、「小規模な市町村の国保は保険財政が不安定になりやすく、運営の広域化を図ることが長年の課題となっている」と、本論の後期高齢者医療制度の見直しから、国保制度の見直しに論点をすり替えています。

 国保財政が不安定になる最大の理由は国庫負担を減らし続けたことです。国保会計に占める国庫支出金の割合は、かつては二分の一近くありましたが、現在では四分の一に減らされています。

 新たな制度の基本骨格として、後期高齢者医療制度を廃止して、地域保険は国保に一本化する、としています。しかし、国保財政を安定化させるための、国や自治体の財政援助については触れていません。

(続く)

 ※「中間とりまとめ」は、2010年12月20日の第14回高齢者医療制度改革会議における議論を踏まえ、「最終とりまとめ」を行い公表されていますが、基本的な論点の大きな変更はありません。以下のHPを参照ください。

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000z9lf-img/2r9852000000z9p3.pdf


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