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香川医療生活協同組合

いま、医療現場はどうなっているか(その1)

(第385回 12月03日 )

 地方政治新聞「民主香川」に連載している、「「医療改革法」は医療をどう変えたか――医療現場からの報告」(第9回)です。2010年8月15日号(1501号)に掲載した「いま、医療現場はどうなっているか(1)」を編集しました。

 8月1日、高松市総合福祉会館で第55回香川県母親大会が開催されました。午後は6つの分科会が行われ、第2分科会の「国民のいのちを守る 安全・安心の医療体制――子どもの医療、後期高齢者医療制度、地域医療など」の助言者として参加しました。この時の報告を元に、医療の現状と今後の取り組みについて考えたいと思います。

 はじめに、いくつかのエピソードを元に医療の現状を考えてみます。

 北里大学の和田講師(公衆衛生学)によれば「患者間の暴力行為を半年以内に経験したことのある医療スタッフは約一割、暴言は三割」だそうです(4/15「朝日」)。2006年12月に、日本看護協会は、看護師が安全・安心に働ける職場環境の改善をしていくために「保健医療福祉施設における暴力対策指針―看護者のために―」を発刊し、病院・診療所など2万ヶ所に配布しました。

 一方で、医師の、患者に対する暴言や心ない発言も珍しくありません。

 医療の現場では、キレやすい患者・キレやすい医師が問題になっていると言えます。

 医療事故と医療訴訟について、事故の正確な数は不明ですが、訴訟の数は2004年をピークに減少しています。患者・家族の「苦情」に病院が速やかに対応する、患者と医療従事者の対立を解決するための医療メディエーターなどの取り組みを病院側が行っているなど、医療側の努力もあると思います。

 救急医療の危機も問題です。香川県ではあまり目立ちませんが、実感として、救急搬入を断わる事例は明らかに増えています。医療側が「専門外」と断わるケースもありますが、患者側が「専門の医師に」と要望したために結果として「断わる」ケースもあります。ほぼ同時間に救急隊から受入れ要請があり、一つを受入れると直後の要請は断わらざるをえない場合もあります(これも「受入れ拒否」と報告されます)。受入れ体制の整備だけでなく、救急車の適切な利用法なども考えていかないといけません。

 高齢者の行き場がないという現状があります。一般病院では「3ヵ月しか入院できない」と言われます。これは、一般病院に多い10対1看護(注1)の場合、入院後2週間以内の患者と30日を超えて入院する患者を比べると、病院の収入は4分の3に減ります。90日を超えると、一部の難病や重度意識障がいの場合を除き、病院収入は半分以下になります。長期入院患者が多いと病院経営が成り立たない、診療報酬の仕組みが問題なのです。しかも、入院日数の平均値にも縛りがありますから、その面でも退院をお願いする場合もあります。

 また、長期入院が可能な療養病床は削減されます。この方針は民主党政権になっても変わっていません(注2)。2002年に38万床あった療養病床は2012年には15万床になります。特別養護老人ホームも不足しています。

 今こそ、医療・福祉に重点的に予算を、の声を大きくあげていく必要があります。

注1:10対1看護の場合、夜勤帯の看護師は通常2人です。あくまで厚労省の計算式に基づくものです。常時「入院患者10人あたり1人いる」という意味ではありません。

注2:最近、民主党政権は療養病床削減を見直しする方針を打ち出しました。この文章は、7月末時点での現状報告ですのでご了承下さい。


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