(第384回 11月30日 )
今、社会保障をめぐる動きの焦点は「国保の広域化」問題です。民主党はマニフェストで、医療制度の一元的運用を通じて国民皆保険制度を守るとしました。そして、その具体策として後期高齢者医療制度は廃止、被用者保険と国民保険を段階的に統合し将来地域「地域保険として一元的運用を図る」としています。
国保法はその目的を第1条で「国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」と定めています。従って、財政的な困難が生じたときには国が責任を持って解決しなければなりません。
しかし、現実はどうでしょうか。国民皆保険が実現した1961年には、国保会計の42.8%が国庫支出金で、1975年には58.5%まで増加していました。1984年の国保法改悪により、国庫負担率が、医療費の45%から給付費の50%に変更されました。医療費=3割の自己負担+7割の給付費ですから、医療費の35%に減少することになりました(高額医療費への補助制度があり実質38.5%)。その後も、国保事業の事務費や保険料減額措置に対する国庫負担を廃止するなどして、2007年度には25%まで減少しました。
第381回(11月16日)で触れたように、国保会計はもともと脆弱なものであり、加入者の保険料を中心とした制度では成り立ちませんから、何らかの補助制度が必要です。
大阪社保協(社会保障推進協議会)の推計では、2007年度の全国市町村国保会計の累積赤字は1713億とみられます。ところが、2008年度の単年度収支は715億円の黒字で、赤字を計上しているのは都道府県単位でみると13でした。しかし、市町村の一般会計からの繰入額が3656億円あり、実質2940億円の赤字というのが実態のようです。
東京都の場合1100億円を投入し1世帯当たり4.6万円、1人当たり2.8万円になります。23区の場合、10万世帯以上の区でみると一般財源からの投入額は、杉並区1.5万円、世田谷区1.8万円、江戸川区4.1万円、足立区4.5万円(1人当たりの額)で、住む場所による不公平がなくなるように各区が努力していることが伺えます。
広域化が進むと、市区町村の一般財源からの投入が不可能になります。事実、厚労省は5月19日に都道府県知事宛に、保険料の引き上げ、収納率の向上、医療費適正化を行い、一般財源からの繰り入れをできる限り早期に解消するように通知を発出しました。
民主党のめざす「地域保険の一元化」は、結局際限なく自己負担が増加する仕組みにほかなりません。
(この項、続く)
|