(第359回 8月27日 )
7月16日にフエ市で開催された、「医療生協セミナー」報告の6回目です。ベトナム側からは、3人の報告がありました。
トァティエン・フエ省協同組合連合会
チャン・ル・ クォ・ドゥァンさんの報告です
最初は、トァティエン・フエ省協同組合連合会チャン・ル・クォ・ドゥァンさんの「コミュニティー保健における医療生協の利益」という発表です。医療生協の特徴についての理解が伺える発言を紹介します。
「日本では全員が医療保険に入っています。また、病気になるとどこの医療機関でも受診できます。しかし、お金を出して医療生協に参加して組合員になると、そのとき認識が変わります。医療生協の病院、診療所などは自分のものだと認識します。医療生協での患者の権利と原則は、自分の命を重視したり、自ら自分の世話をしたり、民主性を確保します。組合員はお互いに健康を守ります」
通訳の作った原稿なので、やや意味不明な部分もありますが、概ねこれまでのセミナーの内容を学習して参加したことが分かります。さて、ドゥァンさんの発表のタイトルの「利益」とは、「利点」程度の意味ですが、5点あげています。
「(1)患者が多いので、医療生協は国立病院の負担を分担します。人民の保健意識を高めます。(2)医療生協の診療所ができたら、近くで治療サービスを受けられます。(3)社会の力を集めて、社会的な組織、団体が医療活動に参加するように呼びかけます。(4)医療生協のおかげで組合員は安い医療サービスを受けられます。(5)医療生協は地方で医療活動、保健、社会的な活動、環境保健を宣伝します。」
少し説明が必要な発言です。ベトナムではドイモイ政策以前は、医療機関は基本的に「国営」でした。しかし、現在は私的医療機関も存在します。国の予算配分を医療にまわす余裕がないため、民間の力が必要だという事情もあります。日本ならさしずめ「民営化」ですが、ベトナムでは「社会化」と呼びます。「安い医療サービス」というのは、日本のように「診療報酬制度」はありませんから、国立病院の医療費は定められているが、私的医療機関では自由に設定されるので高くなる訳です。「人民が自主的に作る組織」だから良心的で「安く」なるだろうという期待があるのかもしれません。確かに日本でも、「自由診療を認めよ」という意見はあるし、高松平和病院のように民医連(全日本民主医療機関連合会)加盟の病院は「差額ベッドはとりません」と言っている訳ですから、良心的な医療機関の方が医療費の負担が「安く」なるという現実もあります。
ベトナム協同組合連合会協同組合
政策開発委員会トア会長の報告です
2番目は、VCA(ベトナム協同組合連合会)協同組合政策開発委員会会長のドァン・ヴァン・トアさんの「ベトナムで医療生協の潜在能力と発展の方針」です。現時点でのベトナム国内での医療生協について報告がありました。
これまで、紹介して来たイェンバイ省イェンビン県のミンタン保健生協のほか、ハノイに、薬草栽培を行うChua boc生協、タンホア省のホップルック運輸生協、バクザン省の生協などです。ミンタン保健生協以外は簡単な報告だったので、機会があれば見にいきたいところです。
写真右がトァティエン・フエ省人民委員会
保健局のレ・ ビエト・バクトさん
3番目は、トァティエン・フエ省人民委員会保健局のレ・ビエト・バクトさんの「トァティエン・フエにおける医療活動の社会化」です。日本語に翻訳されたレジュメにやたら「省略」があるので、最後の「難問と制限」から引用します。
「政府の決めた治療費が低いので、民間資本は国立病院に投資したくない。私立病院で政府が治療費を決めていないので高い。私立病院と国立病院では、医師や看護師など従業員の収入に格差がある。国立病院の医師が私立病院でアルバイトをして、不平等な競争が発生する」
(続く)
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