(第338回 6月1日 )
情勢が動いています。5月28日に発表された日米共同声明は、沖縄県民の願いである普天間飛行場の県外・国外への移設を完全に否定し、移設先を名護市辺野古周辺と明記しました。
5月29日の沖縄タイムスの社説は、「沖縄を再び切り捨てるこの国のあり方には寒気がするほどの不安を感じる」「名護市で反対の市長を誕生させた地元の民意を両政府は踏みにじった。民主的な手続きを無視し続けた」と非難し、「『辺野古回帰』の方針に沖縄は同意していない。これほどの混乱を招き、沖縄をもてあそんだ鳩山首相の政治責任は極めて重く、即刻退陣すべきだ」と主張しています。
さて、第336回(5月25日)の続きです。
宜野湾市のホームページには、伊波洋一宜野湾市長が2月18日に与党国会議員に「普天間ヘリ部隊のグアム移転の検証について」という説明を行った時の資料が掲載されています。これを読むと、「抑止力」という言葉が如何に欺瞞に満ちたものかよくわかります。
沖縄に駐留する米国の海兵隊の中核部隊は31MEU(第31海兵遠征部隊)と呼ばれます。
「検証について」では、まず「『海兵遠征部隊31MEUが沖縄にいないと台湾や韓国に1日で展開できないので抑止力の致命傷になる』との主張は国民をだます嘘である」と主張しています。31MEUは、2006年には合計半年にわたってグアム、フィリピン、韓国、タイ、オーストラリアなどで訓練を行っており、沖縄(普天間)に基地がなければいけないという主張は、事実によって否定されています。
普天間市の作成した資料によれば、2006年〜2009年の4年間で、1か月まるまる部隊が沖縄にいたのは、15か月間、30%程度です。2007年には、第262海兵中ヘリ中隊は、約7ヵ月間イラクに派遣されていました。
海兵隊の重要な役割は「西太平洋での米国の同盟国との安全保障条約を実証するために、合同演習や合同訓練を行うこと」なのです。
さらに、2006年5月の「再編実施のための日米ロードマップ」によれば、「約8000名の第3海兵隊機動展開部隊の要員と、その家族約9000名は、部隊の一体性を維持するような形で2014年までに沖縄からグアムに移転する」とされています。
仮に海兵隊に「抑止力」があるとして、1年のうち半分も沖縄にいない、そして、いずれグアムに移転するのなら、グアムでも「抑止力」は発揮できる訳で、沖縄県とりわけ普天間に基地はいらない、ということになります。
1月28日の朝日新聞に柳沢協二防衛研究所特別客員研究員が「『普天間』の核心 海兵隊の抑止力を検証せよ」と題する論文を寄せ、「海兵隊はいつでも、世界のどこへでも出動する。特定地域の防衛に張り付くような軍種ではない」と述べています。
やはり、沖縄に基地はいらない、普天間基地は「移設」でなく無条件 「撤去」すべきなのです。
(この項、続く)
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