2008年6月、参議院本会議で「後期高齢者医療制度廃止法案」が賛成多数で可決されました。後期高齢者医療制度を廃止する場合、この法案に沿って廃止することになります。いったん老人保健法に戻す訳ですが、廃止による影響を検討します。
基本的な姿勢として、医療費抑制を目的とする「後期高齢者医療の確保に関する法律」を廃止し、老人福祉法の「老人は多年にわたり社会の進展に寄与してきたものとして、かつ、豊富な知識と経験を有するものとして敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする」という精神をいかすことを明確にします。
社保・国保の保険者が負担する「支援金」がなくなり、社保・国保の保険者は、それぞれの高齢者の老人保健加入率や一人当たりの医療費を基準にした「拠出金」を負担する制度に戻ります。
飛来峰No.309(2月9日付)で触れた「健康診査」を廃止し、以前の自治体が責任を持って行っていた「基本健診」を復活させます。この措置により市町村への負担が生じないように、国が必要な補助をする必要があります。
一方、老人保健制度に問題がないわけではありません。老人保健制度発足時の1983年には老人医療費の44・9%が国庫負担でしたが、途中で対象が75歳以上になったことや国庫負担が減ったこともあり、2007年には37・4%になりました。これを元に戻さなければいけません。
一方、窓口負担は軽減措置などを計算すると、1983年の1・6%から2007年には9・4%になりました。後期高齢者医療制度では窓口負担は9・2%で、金額にすると1兆1千億円です。これを、さしあたって、1995年当時の水準である5%に戻します。具体的には、外来が1回500円で月2回まで負担、入院は1日1000円とします。これに伴う財政負担は年間5000億円です。
老人保健制度の対象年齢を、公的年金給付開始の年齢に合わせ、65歳以上にします。これに必要な財源は公費の投入50%と、国保・社保の保険者が50%の財源を出し合って賄います。
低所得者の保険料負担も改善する必要があります。所得に応じた減免制度の拡充と、地域の実情に応じた免除制度ができるようにします。
国保の問題も重要です。市町村国保に対する国庫負担率を、老人保健制度発足時の水準である医療給付費の45%程度に戻します。国庫負担の増額で国保税を引下げます。また、応能負担率を7割に増やし、国保税のかかる報酬上限を引き上げます。
こういった、具体的な提案が必要だと思います。
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