(第321回 3月23日 )
2月16日付の第311回で、4月からの診療報酬改定について触れました。診療報酬は医療費の定価にあたるもので、医療機関の経営に直接影響します。民主党はマニフェストの中で、医療崩壊の阻止を防ぐために9000億円投入することを国民への約束としていましたから、医療関係者の多くは今回の改定を注視していました。
しかし、残念ながら「事業見直し」と同じく財務省主導で行われたため、医療費に新たに投入されたのはわずか100億円で、0.03%の増と実質据え置きの結果となりました。これまでの自公政権の医療費削減政策がストップしたという面では評価ができますが、全体としては「期待外れ」と言わざるを得ません。
診療報酬の改定の中身ですが、大変分かりにくいのが特徴です。2月5日に6つの告示と通知が出されました。告示というのは、例えば心電図は1回取ると1350円になるという医療行為の値段を明示したものです。通知というのは、告示で示した内容を具体的に解説したものです。
しかし、この告示・通知を読んでもよく分からないことが沢山あります。分からないことは厚労省に問い合わせをするのですが、すぐに回答が出て来る訳ではありません。
また、医療保険と介護保険の関係についてもよく分からないことが多く、3月26日に頃に出される予定の「給付調整」を待たなければいけません。また、様々な問い合わせに対して、厚労省から「Q&A」が出されます。4月1日から適用されるものですが、4月に入ってからも出されます。何とかならないものかと思いますが、現実的にはこれに対応せざるを得ません。診療報酬改定の年は、2月ころから5月頃まで悩ましい日々が続きます。
今回の改定の特徴は、小児科・産科など社会的な問題が取りざたされてきた分野に配慮されているのが特徴です。とはいっても、病院が主たるもので、地域医療を支える開業医など診療所には十分な配慮はされていません。むしろ、場合によってはマイナス改定になる可能性もあります。
救急分野や外科にも配慮されていますが、大病院が中心の内容であり、それ自体は評価できるものの、地域医療を支えて来た中小病院には余り配慮されていないと思います。
2年後の2012年には、医療報酬と介護報酬の同時改定が行われます。これを準備している内容も見て取れます。
次回から、しばらく改訂内容の改善点と問題点について考えてみたいと思います。
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