2006年6月、後期高齢者医療制度の創設を中心とする「医療制度改革関連法」が成立しました。しかし、400を超える政省令・告示により具体化するとしたため、2008年4月の制度開始直前まで詳細は不明でした。
2007年5月から2008年9月まで17回にわたり、最新情報を元にした「医療制度改革関連法の全体像と問題点」と題する連載を、本紙で行いました。
法の実施により医療現場にどういう問題点がおきたか、また、医師・看護師不足による「医療崩壊」の現場から、現在の日本の抱える医療・介護や福祉の問題点を考える連載を再開します。
最初のテーマは何といっても、後期高齢者医療制度です。
日本の医療保険制度は、それまで「家族単位」で保険制度を作って来ました。
典型的な例は、男性が勤労者で保険者として保険料を収める。妻や子どもや生計を同一にする親などは被保険者となる。妻や子どもが働きはじめ一定の収入を超えると、扶養から離れ別の世帯を作り保険者になる。
つまり、一定額以上収入があれば保険料を支払う。家族は収入が一定額以下なら保険料は支払わなくてよい制度でした。
退職した後や自営業者、農業・漁業・林業などに従事する人を対象にした国民保険も、生計を同一にする世帯単位で考え、収入・世帯人数・資産に対して課税するものです。
ところが、後期高齢者医療制度は、収入や扶養の状態に無関係に、年齢だけで新たな保険に強制的に加入させるという、これまでの保険制度と全く異なる考えに基づく制度です。
そのため無年金者でも保険料が発生し、年金収入が年間約80万円でも1万5千円程度の保険料を支払わないといけなくなります。
保険料の支払いを滞納するとペナルティーが発生します。従来の老人保健法と異なり、行政が「特別な事情でない」と判定すると、保険証が取り上げられます。政権交代後、この処置を一律に行わないよう通達が出されましたが、その通りになっているかどうかは調査が必要です。
一方で、保険料滞納者に対し「短期保険者証」の発行が40道府県で行われています。通常の保険証は有効期限が1年か2年ですが、短期証が発行されると6ヵ月、3ヵ月、1ヵ月と短くなります。
カゼなら、治るのに1ヵ月もかかりませんが、慢性疾患ならそういう訳にはいきません。自ずと医療機関に足を踏み出すのに躊躇します。結局、医療をうけなることなく重症化する事につながります。
速やかにこの制度を廃止する必要があります。
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