(第224回 2月24日 )
第219回(2月6日)の続きです。介護保険認定調査員の使用するテキストの2006年版と2009年版を比較すると、付け加えられた項目、削除された項目があります。
追加された項目は、独り言・独り笑い、自分勝手に行動する、話がまとまらない、集団への不適応、買い物(介助の方法)、簡単な調理(介助の方法)です。最初の4項目は、国会中継などで政府・与党によく見られるなど一般社会でも認める事象ですが、ある・時々ある・ない、の3段階で評価します。最後の2項目はできる(介助なし)・見守り等・一部介助・全介助の4段階で評価します。
率直にいって、介護の手間を判断する上でそれほど重要な内容とは思えません。買い物や調理に手伝い(介助)が必要かどうかは、ある程度自立した人で問題になる内容であって、介護度を決定づける要因ではありません。
それに比べて削除された項目は、介護度を判定する上で重要な内容が含まれています。
まず、関節の動く範囲の制限の有無の項目です。肘関節と足関節(足首の関節)が評価の対象から外されました。肘関節の動きが悪いと、着替えの介助をするときに手間がかかる原因になります。足関節は歩行時のバランスを取る上で重要です。実は2006年版でも、手の指の動きの評価の項目がなかったために、関節リウマチで指が変形しシャツのボタンが止めにくい、といった細かな動作が十分な評価ができないという問題点がありました。そのため、「その他」の項目に記載する、ということで認定時に反映させる仕組みがありましたが、2009年版では手の指や肘などは「(評価項目に)該当しない」ことになり、ご丁寧に「日常生活上での支障に関しては評価しない」ことになりました。
じょくそう(床ずれ)の有無についても評価の対象から外されました。褥瘡(じょくそう)があれば、医療処置が必要になったり、入浴サービスを利用したり、おむつの交換時など、介護の手間がかかりますから、当然評価が必要になります。
飲水(水分を飲む)も外されました。脳卒中の後遺症や加齢による機能低下で、水分を飲む時にむせる事がしばしばあります。食事介助や水分摂取、薬を飲むときなど、介護の手間に関係します。
認知症の介護で問題になる「問題行動」についても、介護の手間に大きく関係する項目が削除されています。実際にないものが見えたり聞こえる、暴言や暴行、火の不始末や火元の管理、不潔な行為(排泄物を弄ぶ)、食べられないものを口に入れる、の5項目です。いずれも介護をする上で、目が離せなくなる要因です。入院時や施設入所時に問題がおきるのはこういった内容ですから、このあたりをきちんと評価するシステムでなければ、「介護保険」の意味はないといってもよいと思います。
いずれにしても、今回の「改定」が、介護度を軽く認定する目的での改定である、といってよいと思います。速やかに、認定システムの「改悪」を中止し、再検討するべきだと思います。
|