(第219回 2月6日 )
4月から介護保険制度の改定が行われます。主には介護事業所の収入を決める定価である「介護報酬」の改定と、介護保険の認定制度の改定です。
介護報酬については3%アップといわれていますが、2月5日現在、その詳細は明らかではありません。認定制度については、介護認定を低く行うための仕組み作りが行われています。
介護保険は、希望すれば誰でも利用できる訳ではありません。介護保険の利用を申請すると、認定調査員がどの程度の介護が必要か調査を行い、コンピュータで一次判定を行います。その結果と、主治医の書いた意見書を元に「認定審査会」が認定する仕組みになっています。
主治医の意見書は大事ですが、2006年からコンピュータによる一次判定が重要な役割を果たすようになっており、認定調査員の報告が事実上介護度を決めている側面もあります。
調査員が使用するテキストの2006年版と2009年版を比較すると、重要な変更(改悪といってもいい)が行われています。介護の手間を決定する上で重要な、「生活機能」の項目で比較するとよく分かります。
「移動」とは、トイレや入浴など必要な場所に移動する場合の介護の手間の評価です。これまでは、自分では移動がまったくできない場合を「全介助」とし、医療上の必要により移動を禁止する場合も含む、とされていました。2009年からは、入浴も禁止された重度寝たきり状態で移動の機会がない場合は、「自立(介助なし)」とするに変更されました。
「食事摂取」では、胃チューブなど管から栄養補給を行っている場合や栄養分の点滴(中心静脈栄養)ですべて介助を受けている場合は「全介助」でした(チューブからの栄養や点滴の準備を自分でできる訳はないので当然ですが)。2009年からは、食事をしていないなら、口から食べるための介助はしていないので「自立(介助なし)」とする、に変更されました。
「口腔清潔」(口の中を清潔に保つ)では、介助が行われていないが明らかに能力がない場合は「全介助」でした。2009年からは、本人の習慣で歯みがきを行っていない場合は「自立(介助なし)」とする、に変更されました。口の中を清潔に保つことは、寝たきり患者の肺炎予防にはとても重要な事なのですが、「ワシは歯を磨いたことがない」と言ったら、手が動かなくなっても「自立」と判定されることになります。
開いた口が塞がらないのが、「整髪」の項目です。整髪とは髪の毛をとく行為に介助が必要かどうかを評価するものですが、問題は頭髪がない場合です。これまでは「くしやブラシの準備等の行為も含まれる。頭髪がない場合は、頭を拭く等整髪に関する時の行為について判断する」となっていましたが、2009年版では「頭髪がない場合、短髪で整髪の必要がない場合は、能力の有無に関わらず「自立(介助なし)」を選択する」とされました。この「能力の有無に関わらず」という表現に今回の改定の狙いが示されています。
介護度をいかに低く認定するかについての「苦労の跡が偲ばれる」改定だと言えます。
(この項つづく)
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