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再び後期高齢者医療制度を考える(その1)
(第216回 1月27日 )

 麻生政権の支持率がどんどん低下しています。どのメディアの調査でも、20%を超えることはありません。そのため、解散したくてもできない自縄自縛の状態に陥っています。

 100年に1度の経済危機、派遣切りなどの雇用不安や企業倒産が続くため、後期高齢者医療制度が抱える様々な問題がマスコミに取り上げられる事が少なくなりました。しばらく、この欄でも再度取り上げていきたいと思います。

 第142回(08年3月18日付)で、負担限度額の問題を取り上げました。

 「老人保健制度は、75才(当初は70才)になる誕生日の翌月から適用となっていましたが、後期高齢者医療制度は、誕生日から制度が変更になります。そのため、例えば、4月15日が75才の誕生日の場合、4月1日〜14日の医療費と4月15日〜30日の期間の医療費を別々に計算する事になります。(それぞれ負担額が上限を超えると)75才の誕生月には医療費負担が2倍に跳ね上がることになります」と指摘しました。

 この問題について、やっと政府が重い腰をあげました(文末のアドレス参照)。

 「月の途中で75歳になり後期高齢者医療制度に移行する場合、移行前後の医療保険制度でそれぞれ自己負担限度額を支払い、限度額が2倍になるという問題が生じうる。これについては、従前と同様の限度額となるように、2009年1月から、それぞれ限度額を2分の1に設定する」(老発第1121001号の要旨)、という事になりました。特殊ケースであり、主に入院医療が対象になるとはいえ、制度開始前からわかっていた事を今頃になって、という気もしますが、改善したのは事実です。これからも、国民・医療従事者の立場から声を上げていく必要があります。

 2つ目の変化もあります。日本の医療保険制度は、これまで家族単位で制度設計していましたが、後期高齢者医療制度はこの考えを180度変え、75歳を超えると生活実態と関係なく個人単位で医療保険制度に加入することに変更しました。そのため、祖父(祖母)が孫を扶養している場合、75歳の祖父(祖母)は後期高齢者医療制度に加入、14歳の中学生の孫は国民保険に加入する(中学生が保険料を払う?)という事になりました。

 この矛盾は75歳前後の夫婦の場合にも様々な問題を引き起こします。

 厚労省は、住民税課税所得が145万円以上で、単身世帯の収入が383万円以上(2人以上世帯の収入合計が520万円以上)の場合を「現役並み所得」と定義し、医療費負担は3割になります。

 74歳の夫の収入が400万円、73歳の妻が100万円とします。2人の収入は合計して500万円で520万円未満ですから、医療費負担は2人とも1割です。ところが夫が75歳の誕生日を迎えた瞬間夫は後期高齢者医療制度に加入し、単身世帯で収入が400万円で383万円以上ですから3割負担になります。これは収入の多寡の問題ではありません。収入額も生活実態も変わらないのに、制度が変わっただけで何故負担が3倍になるのか、という問題です。

 この問題は批判があまりに多かったため、昨年8月から、「窓口負担は(現役並みの)3割負担だが自己負担限度額は一般並みとする」という特例措置が実施されていましたが、2009年1月から、上記の条件に該当する場合は1割負担に変更することになりました。

 要するに制度変更を理由として負担が3倍になる場合は元通りという事になりました。

 制度開始前から分かっていた矛盾が制度発足後9ヵ月で(部分的ですが)解消した訳で、後期高齢者医療制度が如何にいい加減につくられたものかがよく分かります。このような制度は一刻も早く廃止すべきです。

 ※厚労省の文章がいかに分かりにくいかという実例です。御堪能ください。

 http://www.kokuho.or.jp/general/roudou_tsuchi/lib/ho_20_1121001.pdf


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