(第191回 10月14日 )
少し古い話になりますが、4月11日〜13日の3日間、東京国際フォーラムで第105回日本内科学会総会・講演会が開催されました。その記録が、日本内科学会雑誌の最新号(第97巻第9号)に掲載されています。
3日目の13日の午後に、東京大学の藤田敏郎先生と虎の門病院の山口徹先生の司会で、「わが国の医学・医療の課題と展望」と題する特別企画が開催されました。内容は以下の通りです。
- グローバル世界、日本の医学医療の課題 政策研究大学院大学 黒川清
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いわゆるリサーチマインドとPhysician Scientistの育成−医学教育が取り組むべき喫緊の課題 国立病院機構 矢崎義雄
- 測医学・医療に関する日本学術会議の役割 日本学術会議 金澤一郎
- 医療の質:測定と効用 聖路加国際病院 福井次矢
- 地域医療からみた「この国の医療のかたち」 都留市立病院 大原毅
- 診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業からの提言
虎の門病院 山口徹
これらの発表の中で、私が注目したのは5番目の、山梨県都留市立病院名誉院長の大原毅(おおはら たけし)先生の発表です。
はじめに、中小の自治体病院の経営悪化・医師不足は、病院崩壊、閉院に至る過程を示唆しているように思えると述べ、現在の医療機関の抱える問題点として、以下の点をあげています。
(1)経営困難、(2)財源不足、(3)医師・人手不足、(4)利便性、(5)モラルの低下・拝金主義、(6)自由競争・市場原理の導入、(7)大学医局の無力化と逆にさらなる圧制、(8)臨床研修医制度の失政、(9)日本は医者に何を求めているか
また、財政面では、2007年度の診療報酬マイナス改定の影響で、全国の6割強の病院、自治体病院の9割強が赤字になっているが、どこでも経営努力はしている訳で「普通に考えれば病院が成り立っていかないということである」と指摘しています。
医師不足の実状、英国のブレア改革による医療福祉改革に触れたあと、どうすればよいか、として「医療費亡国論から脱却して、ある程度さらにお金をかけないといけない」と述べています。
日本内科学会は会費収入が年間8億円前後で、会費が9千円ですから、会員は10万人近い巨大な医学会です。年次総会は3万人近くが参加しますから影響力が相当ある団体だと思います。そこでも、「医師不足」「医療崩壊」といった言葉が普通に語られるところに、この問題の根深さと深刻さがあると思います。前回(10月7日付)も述べましたが「地域での医療のありかた」を、地域で問題にしていく、地域の力で医療を守っていく運動が今求められていると思います。
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