(第188回 9月26日 )
9月20日(土)午後、善通寺診療所2階で、善通寺診療所や善通寺民主商工会(善通寺民商)などが参加する「善通寺社会保障をよくする会(仮称)」主催の「医療崩壊」学習会が開催され、「医師不足と医療「崩壊」」と題して私が講演を行いました。診療所の職員、医療生協の組合員さん、善通寺民主商工会の方、地域の医療機関の医療従事者など17人が参加しました。
平日はデイケアを行っている場所で、講演と意見交換をおこないました
「国際的に見て日本の医療体制はどんな水準なのか」「なぜ、今日のような事態が起こっているのか」「中讃・西讃・高松などの状況はどうか」「地域医療再生への全国の取り組みの経験」などについてお話しました。
はじめに、現在の医師不足の直接的な原因である医師養成数の削減政策について、歴史的に振り返ってみました。1980年代の「臨調行革路線」(第2次臨時行政調査会)に代表される「中曽根・リーガン・サッチャー」時代は、医療費の「適正化」を主眼にした医療の「効率化」に力点がおかれ、「医師数をへらせば、医療費の削減ができる」という政策が世界的に実施されました。当時、朝日新聞は社説で「医師が増えれば国民医療費が増大し、健康保険制度がパンク」と書きました。
しかし、世界的には1995年頃から医療の安全や質について重視する考え方が主流になり、そのためにはマンパワーが必要であるという認識になり、各国が医師をはじめとする医療従事者の養成に力を入れる事になりました。
心筋梗塞の治療を例にとりましょう。私が大学で医学を学んでいた1970年代は、心筋梗塞の主要な治療は「床上安静」、つまりベッドの上で安静にすることと薬物を静脈内に点滴することでした。教科書にも、心臓カテーテル検査は禁忌(やってはいけないこと)になっていました。現在、最新の治療は速やかにカテーテル検査を行い、閉塞した血管にさまざまな治療を行うことです。当然、医師や看護師、検査技師、放射線技師など多くの人員が必要になります。
医療の質や安全を重視するなら、医師をはじめとする医療従事者の養成は不可欠なのです。ところが、日本では一貫して医師数削減政策を続けて来ました。ここに、現在の医師不足や医療崩壊の根源があることに目を向けなければいけないと思います。
※厚労省が2005年3月に開催した「第2回医師の需給に関する検討会」の資料を参考にして下さい。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/03/s0311-5b.html
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/03/txt/s0311-5.txt |