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宇沢弘文先生の「社会的共通資本としての医療」に関する講演を聞きました
(第187回 9月19日 )


 日本生協連医療部会は、2008年度上期単協代表者会議を9月16日〜18日の3日間大阪市内で開催し、全国の医療生協から200名近い参加がありました。2日目に、宇沢弘文東京大学名誉教授の「社会的共通資本としての医療と日本の医療崩壊」と題する学習講演が行われました。その内容を紹介します。

「医療生協の戦略を学ぶ」と題して講演を行う藤谷事務局長
宇沢先生は近代経済学者(マクロ経済学)で、文化功労者・日本学士院会員・米国科学アカデミー客員会員・文化勲章受賞者です

 社会的共通資本は、一つの国ないし特定の地域が豊かな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような自然環境と社会的装置である。

 一人一人の市民の人間的尊厳を守り、魂の自立を保ち、市民的自由が最大限に確保できるような社会を形成するという視点に立って、行わなければいけない。

 医療制度は教育と並びもっとも重要な社会的共通資本の一つであり、「政府」の役割は、医療サービスが社会的な観点から公正なものであり、必要な財政措置を講ずることであり、医療の内容に関わる介入や管理は行ってはならない。

 1941年1月、ロンドン空襲が始まろうとする時、時のチャーチル首相は、勝っても負けても破壊と破壊しか残らないと考え、戦後再建問題委員会を設置した。同年6月にベヴァリッジを委員長とする社会保険に関する小委員会を設置した。

 医療を中心に社会保障関係の支出は乗数効果が大きく、経済活性化に重要な役割を果たすとした。医療費に1億円使うと、2億円所得が増えるという考え方の元に、「すねての国民に対して、生まれてから死ぬまでの全生涯を国の責任で保障する」社会保障制度の整備を勧告した「ベヴァリッジ報告」を出版した。

 出版後2時間で7万部、1年間で62.5万部売れ、2ヵ月後の世論調査でベヴァリッジ報告を知っている人が95%、賛成が88%であった。

 1945年9月の総選挙で労働党が圧勝しアトリー政権が成立した。その中心がNHS:National Health Serviceであった。NHSは、すべての傷病に対して、無償の医療サービスを提供し、その費用はすべて国が負担した。

 その後、病院勤務医への報酬が最高でも、中央官庁の局長クラスより少し低い程度に設定。また、医療への官僚的管理が強く、英国より医師の流出が続き、医療施設・設備の不足とサービスの低下が著明となった。

 その後、第2次サッチャー政権で、医療費抑制を目的に管理的な管理強化が図られ、60才以上の腎臓透析を禁止するという通達まで出されるようになった。

 その後、ブレア政権になりNHSの再構築が図られようとしているが、一度壊された職業的倫理と志を回復することは困難である。

 ※「医療」のみならず「社会保障」一般が、「社会的共通資本」つまり、公共の財産であるという概念であると、私は感じました。これからの社会保障の改善の運動に重要な概念だと思います。


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