日本生協連・医療部会発行の、「虹のネットワーク」 2008 年7月号のコラム「社会派 しんさつ室」に掲載された文章を転載します。一部修正しています。
(第180回 8月22日 )
後期高齢者医療制度に対する批判が徐々に広がり、福田政権の支持率低下の主因となっています。
その中でも反発が強いのが、4月の診療報酬改定で新設された「後期高齢者終末期相談支援料」です。「終末期と保険医が判断した者について、医師、看護師」等が「共同し、患者及びその家族等とともに、診療内容を含む終末期における療養について」文書や画像に記録し、患者が死亡した時に医療機関に2000円の報酬となるというものです。
医師が「あなたは終末期です」と宣告する、「終末期の療養」の中味は、当然医療費の少なくてすむ「在宅死」への誘導ですから、まさに「姥捨て医療」の典型といえるでしょう。
「医療生協の患者の権利章典」の実践には「自己決定権」の尊重があります。患者さんが自らの最後の場として、在宅を選ぶ場合もあるでしょうが、入院医療も選択肢としてあるはずです。
最近聞いた話を紹介します。悪性腫瘍末期の方が、呼吸困難と全身のむくみの治療で入院しました。在宅でできるだけのことをしたいといって、病状が悪化する中で、片付けを行っていた方です。入院後の検査の結果、腫瘍が大きくなり息ができにくくなっていることが解りました。治療が難しい状態であることを告げると、苦痛を取り除く程度の鎮静剤の使用を希望し、数日後安らかに息を引き取りました。
インフォームド・コンセントにより病状を患者さんが正確に把握する、患者さんや家族の希望を可能な限り尊重する、これが終末期に限らず、本来の医療のありかたではないでしょうか。
人生の最後をどのように過ごすのか、元気なうちから、班会や家族の間で話しあうことが大事だと思います。こういった取り組みを積極的に行うことも、医療生協のブランドづくりになります。
注:この文章が全国の医療生協組合員さんのお手もとに届いた頃に、中医協で「後期高齢者終末期相談支援料」凍結の答申が行われ、実施されることになりました。
当然の結果ですが、あくまで「凍結」であって、廃止ではありません。6月30日に厚生労働省保険局医療課長が出した「後期高齢者終末期相談支援料等の凍結について」という通知には「後期高齢者終末期相談支援料………については、適用日をもって凍結し、別に厚生労働大臣が定める日(現時点では定められていない。)までは算定できないこととした」となっています(適用日は7月1日です)。
つまり厚生労働大臣が「別に………定める日」を決めたとたん復活(解凍ですね)する仕組みになっています。診療報酬からこの項目を撤廃させるためにも、後期高齢者医療制度の廃止法案の、衆議院での速やかな審議・可決を求めるものです。
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