第27回香川県保険医協会定期総会記念講演の内容紹介です(第3回)
(第176回 8月1日 )
3番目の柱、公的医療費増加の財源選択。医療費抑制政策を転換することは、日経以外の全国紙、厚生労働省も認めました。問題は財源についての国民合意がないことです。公費をふやすことについての緩やかな合意があるのですがまとまってない。
第1は、すべての全国紙、医療政策の専門家以外の研究者は、消費税一本です。第2は歳出のむだ削減による医療費財源の捻出論です。医療関係者の間で根強い支持がある。3番目は社会保険料の引き上げを主財源とする、です。
二木先生の講演風景です 私自身は、主財源は社会保険料引き上げという立場です。補助的にたばこ税、所得税、企業課税、消費税の引き上げも用いるべきだと考えています。ただし、社会保険料の引き上げと標準報酬月額の引き上げというのは、組合健康保険と政府管掌健康保険の被用者保険に限定して、それが困難な国民健康保険と後期高齢者医療制度には国庫負担を増額すべきだと思います。そんなことを言ったって、国民健康保険の無職者とか年金の人も多いから、とてもじゃないから保険料が払えませんよ、というクレームがあります。私もそのとおりだと思います。大事なのは医療保険全体のうち、国民健康保険は3分の1です。3分の2は被用者保険で、それはまだまだ上げられるわけです。特に組合管掌健康保険はまだまだ上げられます。企業負担だけじゃなくサラリーマン負担で。所得水準は組合管掌健康保険の方が政府管掌健康保険より高いのですけど、保険料は少ないんです。だから、社会保険料全体を、貧しい人も全部保険料上げるという点ではそれはおかしいかもしれないけれど、とれるところからとれよと言っているだけです。
財源選択を考える場合、現実に今そこにある医療危機をどうするかということを考えると、短期的に今の政治的な力関係を前提にせざるを得ないわけです。財源選択の基準は、2つあり、財源調達力と相対的な政治的実現可能性の両面から見る必要があります。もし、日本の医療をよくするために必要なお金が数千億円だったら道路財源で十分です。長期的にどのぐらいに上げる必要があるかというと、米国以外の主要先進国並みにするために、大体8兆円ぐらい必要です。イギリスのブレア政権はそのぐらい上げました。
大きな財源調達力があるのは、消費税と社会保険料しかありませんが、消費税はまず年金に優先でこれは法律で決まっています。財政赤字の補てんが必要です。それから少子化対策ということで、社会保障を目的にしたとしても、医療にはおこぼれしかこないんです。ゼロとは言いませんが、主財源としては社会保険料で確保しないととても無理だよと、こういう話です。
私がこの立場をとる理由は2つあって、日本の社会保険料の水準は、企業分も労働者分も低いのです。今は正規雇用をふやす方向に揺り戻しが起きていて、正規雇用がふえると社会保険料がふえるということで、これは追い風になるということです。もう1つの政治的理由は、今述べた通りで、消費税を主財源に考えてたら医療費は当分上がらないということです。
あと、私も誤解のないように言っておきますけど、10年20年後のことを理想的な制度が実現する、改革が実現するということを考えるんだったらいいたいことが言えるけれども、今そこにある医療危機を解決するためには、もう社会保険料を主とした改革しかないでしょと言っているわけです。
注:講演内容(大要)の紹介を終わります。香川県保険医協会総会の記念講演ですが、演者の主張を展開したものであり、保険医協会の主張と必ずしも一致するものではないことをお断わりしておきます。興味のある方は、「医療改革——危機から希望へ」(二木立)勁草書房2007.11刊 ¥2700+税 |