あなたにもあげたい 笑顔 健康
TOPヘ 香川医療生活協同組合
 第27回香川県保険医協会定期総会記念講演の内容紹介です(第2回)

保険医協会総会で二木立教授の記念講演が行われました(2)
(第175回 7月29日 )

 これらの3つの改革には、批判的意見もあります。社会医療法人にストレートに移行するのは厳しいと思います。ただ、医療法成立から60年の歴史で初めてで、医療法人の非営利性が強くなるというふうに期待できると思います。産科領域の無過失保障制度。対象が狭く、分娩時の医療事故による重度の脳性麻痺だけ。現在の制度的な制約、政治的な力関係を考えると、いわば小さく産んで大きく育てるというやり方しかないわけです。問題は3番目で、医療安全調査委員会に関して私は大枠としては評価しています。今の何がされるかわからない状況から比べると一歩前進だと思います。

 医療者の自己改革、私が注目したことは、日本医師会が診療報酬改定に際し、勤務医対策のため医療本体の引き上げ財源の全部1000億円に加え、診療所分の診療報酬引き下げ400億円に合意したことです。診療所から病院への診療報酬シフトが史上初めて生まれた。これは驚くべきことです。ただし、外来管理加算、時間要件導入、あれがよかったか否かという点については、検証が必要だと思います。以上が第1の希望の芽の拡大です。

 第2の希望の芽の拡大は、全国紙の報道姿勢の変化です。数年前までは毎日新聞を先頭に、小泉政権の医療改革や医療構造改革・医療費抑制を賛成するどころかもっとやれと言っていましたが、変わりつつある。昨年4月時点では、朝日と毎日はこれ以上の医療費抑制は危ないと批判し始めました。昨年後半には読売新聞も医療費増加容認に転じました。一般の医療記事ですと、医療危機や医療荒廃の多面的な報道が増加しています。マスコミの報道姿勢は医師に好意的に変わっています。これが2番目です。


二木先生の講演風景です

 医療問題の報道姿勢の変化で注目すべきことは、昨年11月に東京地方裁判所が下した、混合診療を明示的に禁止した法はないという判決です。この判決に対して、日経以外の全国紙が混合診療全面解禁を支持しなかったということです。

 希望の芽の3つ目ですが、福田内閣が、医療費抑制政策を部分的に見直したわけです。福田さんは自民党の総裁選挙の公約に高齢者医療費負担増の凍結をトップで掲げました。それから、診療報酬が本体部分はごくわずかですけれども引き上げられた。こういう点で、政権の内部でも少し変わっているということがわかります。

 次に2つの閣議決定の見直しの可能性、1つは医学部定員の削減を継続するという閣議決定の見直し。もう1つは骨太の方針2006の社会保障費の当然増を1年当たり2200億円抑制する方針の見直しです。

 この他、3つ出ました。厚生労働省の安心と希望の医療ビジョンです。医師数については、現状では総数が不足しているという認識の下で対応していくと書いています。医療従事者数の数と役割、地域で支える医療の推進、医療従事者と患者家族の共同の推進。言葉としていいことを書いています。医師養成数を増加させる、閣議決定そのものを変えると言い出しました。それから、医療の公共性ということをすごく強調しています。ただ、医師数増加を強調しているのはいいのですが、具体的数値目標やそのための費用増加にも触れていません。

 2番目は社会保障国民会議中間報告、現時点における我が国の医療・介護サービスにかかる給付金は国際的に見ても必ずしも高くない。将来の財源確保が大きな課題となることは不可避であるとか。日本の医療費水準は諸外国と比較して決して高いと言えない。それから、社会保障の機能強化の財源、速やかに負担についての国民合意を形成し、社会保障制度に対する国、地方を通じた必要な財源の確保を図るべきである、今後さらに具体的議論を深めることが必要ですという。この文書で一番大事なことは何かというと、日本の医療や介護費用の水準は高くないということを公式に認めたということです。

 それから、3番目が経済財政諮問会議の基本方針です。重要課題実現のために必要不可欠となる政策経費については、これまで以上にむだゼロ、政府の棚卸し等を徹底し、一般会計、特別会計の歳出経費の削減を通じて対応する。総論では抑制するけども、重要課題は別枠に扱いますよということです。

(次号に続く)

関連項目へ “飛来峰”バックナンバー

TOPへ 香川医療生活協同組合