地方政治新聞「民主香川」に「医療制度改革関連法の全体像と問題点」を連載しています。2008年4月27日号(1421号)に掲載した「後期高齢者医療について その1」です。一部修正しています。
(第159回 5月30日 )
いよいよ後期高齢者医療制度が始まりました。これまで明らかになった問題点についてまとめていきたいと思います。
まず、一番目の問題は、福田首相による呼び名の変更です。4月1日の閣僚懇談会で、後期高齢者医療制度について「周知不足。ネーミングもよくない」と指摘し、通称を長寿医療制度とするよう舛添厚労相に指示しました。
しかし、「後期高齢者医療制度のお知らせ」と題した政府広報(「あしたのニッポン」第4号)は既に3600万部各戸配布されており、「SO」(少し遅すぎる。私の造語でう)という感じです。マラソンのスタートで、号令を「ヨーイ」とかけたところで転んだようなものですね。
二番目は、保険証の問題です。保険証には二種類あり、従来の国民保険証等と同じサイズのものと、テレフォンカードサイズのものです。香川県は後者で紙製です。
3月下旬、実家に帰った時に母の保険証を偶然手に取りましたが、第一印象は「チャチ。間違って捨ててしまいそう。字が小さすぎて後期高齢者にまず読めないだろう」という事でした。また、3月までの保険証は(自分で)返却してください、という記載に驚きました。「年金は天引きするが、保険証は町役場まで返しに来い」と言いたいのでしょうか?
私の感想通り、全国で「ダイレクトメールと思って捨てた」という方が続出しました。極めて当然の結果です。
保険証が届かない、という方が7万人近くいました。従来の保険証でも対応可能と通達が出されましたが、現役並み所得の3割負担については医療機関では判断できません。差額を後日請求する場合もあり、医療機関と患者に制度不備の責任がおしつけられる、無責任きわまりない制度だといえます。
三番目は保険料の問題です。「死亡した人にも請求した」というのがあります。リストは2月頃に作っていますから、3月に死亡した人はわからないというのが理由ですが、死亡診断書は市区町村役場に届けなければ、火葬も埋葬もできません。後期高齢者について厚労省は「いずれ、死は避けられない」といっているのですから、発送前に死亡者リストと突き合わせるくらいのことはできたはずです。
この制度がいかにいい加減なものかがよくわかります。
対象でない人から保険料を引き落した、保険料の額が違っていた、などいい加減な対応には、枚挙にいとまがありません。後で修正すればそれでよいだろうという、お役所仕事の典型といえます。
注:本稿は、4月18日現在の情報で執筆しています。 |