(第151回 4月22日 )
asahi.com が4月21日に「「後期高齢者医療で大変」58歳、87歳母と無理心中か」という記事を配信しました。「(息子は)「(新制度で)保険料が上がったし、再入院するには、医療費も上がり大変だ」と話したという。介護のために仕事を辞め母の年金を生活費に充てていたとし、保険料が天引きされ、生活が苦しいと漏らしていた」との事です。
所得の多い高齢者に応分の負担を、といいながら、所得の多寡にかかわらず負担を強いる誤った政策の犠牲者が早くもでた事に、強い憤りを感じます。
4月20日付「しんぶん赤旗」は、「「後期高齢者医療制度」について、都道府県医師会のうち、少なくとも10の府県医師会が「75歳以上の高齢者を差別する」などの理由で反対している」ことが明らかになったと報じました。「茨城県医師会は「断固反対で撤回を求めて運動している」と回答し、広島県医師会も「制度の廃止を呼びかける声明文を9日付で出した」」そうです。
その一方で、後期高齢者医療制度に賛成の立場を取るある県医師会では、最高幹部が「75才以上は国保一般の5〜6倍医療費がかかる。金がかかるから分けたもの。診療報酬の点数は違いがなくなったので問題はないが、面倒くさい」と語ったと伝えられています。
高齢者の医療費は若い人の医療費の5倍かかるという「迷信」には、実はトリックが潜んでいます。一人当たりの老人の医療費とは、(老人患者の医療費の合計)÷(全老人人口)ですが、分母に当たる全老人人口には多数の病気の方が含まれています。若人の医療費とは、(若人の医療費)÷(全若人の人口)で、分母となる全若人には健康な人が多数を占めています。
結局、高齢者には病気の人が多いので、健康な高齢者も含めての一人当たりの医療費は高くなる。若人は健康な人が多いため分母が大きくなり、健康な人も含めた一人当たりの医療費は少なく見える、というだけの事です。
「カゼにかかったら若人は3日分の薬をもらうが、高齢者は15日分もらっている」「心筋梗塞になると、若人は2週間程度で退院するが、高齢者は2ヵ月半入院が必要だ」などと言えば、誰が考えても変だと思うでしょう。入院して治療を行う場合、働き盛りの人なら「必要な検査や治療を可能な限りやってほしい」と本人も家族も思うでしょうが、高齢者の場合「必要な検査や治療はしてほしいが、本人を苦しめるようなことはできるだけ控えてほしい」というのが普通の考え方です。事実、一人当たりの入院医療費は高齢者の方が低いのです。
こういう「迷信」にとらわれることなく、必要な医療を求める世論づくりに力を入れていく必要があります。
注:引用文は若干の改変を行っています。厚労省は、高齢者以外を「若人」といいます。以下のHPを参考にしました。
http://www.asahi.com/national/update/0421/TKY200804210284.html
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-04-20/2008042001_01_0.html
http://hodanren.doc-net.or.jp/kenkou/index.html |