(第102回 10月12日 )
10 月 3 日付「日経」に、「法人税・社会保険料を国際比較 税率下げ議論へ」という記事が掲載されました。首相の諮問機関である政府税制調査会(政府税調)が、 2 日行った来年度税制改正に向けての議論の中で示された資料(注1)を元にした記事です。
財務省が、主要国の法人税(国税と地方税)と社会保険料を合わせた企業負担(以下、「企業負担率」)の比較調査、「自動車製造業の………企業負担率は、日本は 30.4 %と米国の 26.9 %、英国の 20.7 %に比べ高かった。電機も同様に日本が 33.3 %、米国は 28.3 %、英国は 23.4 %と、日本が両国に比べ 5 − 10 %高い」と指摘、一方でドイツやフランスは日本より高いが、「ドイツは実行税率を 38.7 %から 29.8 %に下げる予定」としており、見出しの「税率下げ議論へ」と誘導する内容になっています。
しかし、グラフをよく見ると日本の企業負担率は、情報サービス業が 44.2 %に対し、自動車製造業は 30.4 %、エレクトロニクス製造業は 33.3 %と、既に 10 〜 15 %近く減税等の恩恵を受けており、企業の都合による「更なる減税」を要求するものです。また、ドイツの「法人税改革」も、政府税調の海外調査報告によると「所得税の最高税率の引上げ( 42 %→ 45 %)」もセットになっており、ドイツ国内で利益をあげている多国籍企業が所得を外国に移していることに対する対応が目的で「企業の資本が国内投資に向けられることで、雇用の創出や賃金の情趣尾、更には所得税・社会保険料の増収が期待されている」としています。
経済産業省の「公的負担と企業行動に関するアンケート調査について」が 9 月 28 日に公表されました(注2)。この報告によると「企業負担」について、法人所得課税と社会保険料のいずれもが重いとしたのは 54 %で、法人実効税率が国際的にある程度マイナスの影響を与えていると回答したのが 44 %、中長期的にマイナスが 49 %となっています。
しかし、法人実効税率が引き下げられた時の対応は、 68.7 %が投資に回す、 48.5 %が債務返済で、景気の浮揚につながることは考えにくい回答です。また、生産拠点を移転する理由は、労働コストが 84.7 %、海外市場の将来性が 65.1 %であり、税負担・社会保険料負担をあげたのは 40.2 %にすぎません。そして、海外への事業展開を計画していない企業に、法人税率が今のままで社会保険料負担が増大しても「海外移転は検討しない」が 87.1 %、法人実効税率が 30 %程度に引き下げられた場合に「国内回帰を検討しない」が 69.5 %で、「企業負担」を理由に海外進出をしている訳ではない、という実態が示されています。
大企業に、もうけにみあった負担を求めれば、消費税増税は不要です。
注1: http://www.cao.go.jp/zeicho/siryou/k16kai.html
注2: http://www.meti.go.jp/press/20070928013/9_KK_A.pdf
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