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医師不足の原因は偏在ではなく絶対数の不足です(その2)
(第83回 8月3日 )

 7 月 27 日付「飛来峰」(第 81 回)で、医師不足問題を取り上げました。今回はその補足です。

 2007 年 4 月 27 日に自由民主党政務調査会が「緊急医師不足対策特命委員会」を開催しました。自民党の HP によれば「医師不足は特定の地域の問題ではなく、日本全体の問題」としながらも、「離島やへき地などに加え、都市部でも小児科や産婦人科などを中心に医師が不足している現状」と、あくまでも地域や診療科による偏在であるとの認識を示しました。しかし、 OECD ヘルスデータ 2007 によれば、人口 1000 人あたりの医師数は OECD 平均が 3.0 人に対し、日本は 2.0 人で明らかに絶対数が不足しています。

 1986 年に厚生省(当時)の「将来の医師需給に関する検討委員会」が「昭和 70 年を目途に医師の新規参入を最小限 10 %削減する」という意見をまとめ、文部省(当時)が医学部の定員を削減したことによるものです。当時、医師会や歯科医師会はこの方針に賛成、朝日新聞や毎日新聞など大手マスコミも、社説で賛成の意見を表明しています。

 2005 年 3 月 11 日に厚生労働省が開催した「第 2 回 医師の需給に関する検討会」で、長谷川委員(国立保健医療科学院 政策科学部長)が以下のように発言しています。

 「医師需給について、国際的にどういう議論になっているかについて、一言で申し上げて大変驚きました。私は 1990 年代にちょっと分析したことがありまして、それをそのまま使えばいいと思ったのですが、ガラッと論調が変わっています。特に最近、世界各国でさまざまな報告書が相次いでいます。偶然ではなく、どうも必然みたいです。結論から申し上げますと、議論の基調は、過剰から不足に変わってきている。

 世界銀行は、医師以外の人材も含めているのですが、これを見ますと、特に医師で顕著になっています。まず第1番目に、足りない。それから不均衡。例えばプライマリケアの医師と、専門家の不均衡、公衆衛生の経費。地域的な不均衡、格差、人が移動する、世界的には発展ゾーンから自動流出の問題が大きい。

 各国の論調はほとんど変わりません。特にアングロサクソン系の国々では不足ということで、実際にイギリスでは、医学部の入学定員を2倍にしています。カナダの病院、アメリカははっきりしておりませんが、もうすでに5%増やした。米国では規制がありませんので、大学が自主的に増やしたと聞いています。

 なぜこういうことが起こっているかの背景です。結局、 1990 年代までは医療制度改革が進んで、医療のお金の適性化を中心にするような議論が多かった。システムのいろいろな部分を改善していくという考えで、どうも効率のほうに力点が多かった。ところが、 21 世紀前後になり、いろいろな事件が起こりました。 1995 年ごろから 2000 年の間に、一般に医療の安全、質に大変に関心が高まってきた。 2000 年以降の論調が、大きく変わって、そしてマンパワー対策に関しても医療の質を中心に考えていこう。医療の質や安全、医療の標準化ということで、この5年間の論調が随分変わってきているということです」

 医療の安全や質の向上のために、国際的には医師数を増加させる方向で政策的に努力が行われており、この面でも日本が大きく立ち後れている事を示しています。

 今回引用した検討会の議事録は、以下のアドレスを参照ください。
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/03/txt/s0311-5.txt

 

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