日本生協連・医療部会発行の、「虹のネットワーク」 2007 年4月号のコラム「社会派 しんさつ室」に掲載された文章を転載します(少し手直ししました)。
(第57回 4月24日 )
1986 年 1 月、松江市で行われた女子バレーボールの試合最中に、ダイエー(当時)のハイマン選手が突然ベンチで倒れました。試合は中断されることなく続行されましたが、試合会場から担架で運び出されるTVニュースが流れ、海外のメディアから「日本人はなぜ救急蘇生を行わないのか」と批判されました。
特殊な医療器械や薬剤を使用せずに行う救急蘇生を、BLS(一次救命処置)と呼びます。その内容は人工呼吸や心臓マッサージで、救急医療に携わる医師などが、一般市民でも救急蘇生が行えるような教育プログラムを作り普及していますが、まだまだ十分広まっているとはいえません。
心筋梗塞などの心疾患による急性死の原因に、心室細動という重症の不整脈があり、その治療にAED(自動体外式除細動装置)が用いられます。不整脈の診断を自動的に行い、電気ショックをかけることが出来る器械で、ある程度の訓練を受ければ、誰でも使用が可能です。
2004 年 7 月に厚生労働省が、非医療従事者がAEDを使用して電気ショックをかけることを認める通達をだしました。それ以来、AEDの講習が全国的に行われるようになりました。
BLSだけでは十分な救命率を得ることは困難でしたが、AEDが普及することにより、心肺停止状態の救命例の報告が増えています。今年の 2 月に開催された東京マラソンでも、 1km ごとに計 38 台のAEDと担当者を配備し、二人の命が救われました。
各地の公民館など公共施設への配備が進んでいますが、夜間になると施設に施錠されるために使用不可能になるなど、地域全体でみた時には問題が残ります。
医療部会では、AEDとBLSのインストラクター養成の仕組みを作ることを検討しています。支部単位でAEDを設置するとか、AEDを使える組合員を増やすことを検討していきたいと思います。医療生協の地域に於ける社会的役割を発揮するための活動を広めて行きたいと思います。 |