(第591回 8月20日 )
第579回(6月7日)、581回(6月14日)で、生活保護について触れました。特に、問題として取り上げた「生活保護法改正案」は、参議院での安倍晋三首相に対する問責決議可決の余波で廃案となりましたが、既に決定していた8月からの保護費減額については実施されることになりました。
保護費のうち生活費にあたる「生活扶助費」が3年かけ最大10%減額(平均6.5%)、小学生と中学生の子どもがいる都市部の40代夫婦の場合、月額(現行22万2000円)が、8月からは21万6000円、2015年度には20万2000円に下がります。
生活保護の捕捉率(生活保護の適応となる世帯のうち、実際に利用している世帯の割合)は、日本では2割程度とされ、イギリス、フランスでは約9割、ドイツでは6割と言われています(調査年により数値には差があります)。その理由として大きいのは、生活保護の利用についての「スティグマ」(負の烙印、偏見)があるからです。この間の、芸能人にかかわる生活保護バッシングがこの偏見をさらに増大していると思います。
こういった実態は世界ではどう見られているのでしょうか。
国連の社会権規約委員会が5月に日本の生活保護制度についての「勧告」を行いました(引用に当たり一部省略しました)。
委員会は、無年金高齢者および低年金者の間で貧困が生じていることを懸念する。貧困が、年金拠出期間が受給資格基準に達していない高齢女性に主として影響を与えていること、および、スティグマのために高齢者が生活保護の申請を抑制されていることを懸念する。さらに、「国民年金及び企業年金等による高齢期における所得の確保を支援するための国民年金法等の一部を改正する法律」で導入された改正により、多くの高齢者が無年金のままとなることを懸念する。
国民年金制度に最低年金保障を導入するよう求めた前回の勧告をあらためて繰り返す。また、生活保護の申請手続を簡素化し、かつ申請者が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとるよう求める。生活保護につきまとうスティグマを解消する目的で、住民の教育を行なうよう勧告する。(日本語訳:社会権規約NGOレポート連絡会議)
生活保護制度は、簡単に利用でき、必要がなくなれば簡単に利用しなくなるごく「普通の」制度ととらえるべきなのです。
注:下記のHPを参照ください。
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-133.html
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