第744回:「戦争法案」と「民間人」の関係を考える

平和安全法制の審議が進むにつれ、政府・防衛省の説明が次々と変わって来ました。当初「日本人の乗っている船を救助する」といっていた政府が、「日本人が乗っていなくても」構わないと言い出しました。

こんないい加減な議論で、法案の成立を許すわけにはいきません。速やかに廃案にすべきです。100歩譲っても、衆院での再審議が必要だと思います。

8月26日の参院安保法制特別委員会で、イラク派兵の経験をまとめた陸上自衛隊の内部文書「復興支援活動行動史」を元に質疑が行われました。辰巳孝太郎議員(共産)の質問に対し、中谷防衛大臣は「総輸送力の99%を民間輸送力に依存」と明記されていることを認めた上で、民間航空機では、日本航空、アントノフ航空(ウクライナ)、ブリティッシュ・エアウェイズ(英国)、タイ国際航空を利用したことを明らかにしました。

しかも、武器・弾薬の輸送も含まれるか、という質問に対して、中谷防衛相は当初「人道支援物資」だとごまかしましたが、最終的には武器・弾薬も「含まれている」ことを認めました。

武器・弾薬の輸送を行っていれば、当然攻撃の対象になります。しかも、この「輸送」は、イラク特措法によるものではなく、一般的な契約に基づくものだと答弁しました。

国内での「輸送」行為に伴う労働は、労働安全衛生法の対象になりますが、国外で行われる「労働」についてはその対象となりません。従って、事故が起きても、「一般的な契約」に基づく海外の労働ですから、日本国内の法制では、対応に限界があります。

下手をすると、生命保険などの保険に入っていなければ、何の保障もないことになるかもしれません。さらに、生命保険などの「保険」は、通常は戦時に適応されませんから、今回の法案が想定する「戦闘地域」でのできごとであれば、いくら高額の生命保険に加入していても支払いの対象にはならないのではないでしょうか。

民間人も巻き込むことが明らかになった以上、今回の法案は速やかに撤回すべきだと思います。