第709回:医療費適正化計画について(その1)

「医療保険制度改革」が国会で議論されています。今回は「医療費適正化計画の見直し」です。今回の法案のもとになるのが、1月9日に開催された第85回社会保障審議会医療保険部会に提出された「医療保険制度改革骨子(案)」で、その内容(大要)は以下の通りです。

○都道府県が、医療機能の分化・連携、地域包括ケアシステムの構築を図るために策定される地域医療構想と整合的な目標(医療費の水準、医療の効率的な提供の推進)を計画の中に設定、国においてこの設定に必要な指標等を定める。

○見直しに合わせ、現行の指標(特定健診・保健指導実施率、平均在院日数等)について必要な見直しを行うとともに、後発医薬品の使用割合等を追加する。

○毎年度の進捗状況管理、計画期間終了前の暫定評価等を行い、目標が実績と乖離した場合は、都道府県はその要因分析を行うとともに、必要な対策を検討し、講ずるよう努める。

○都道府県は地域医療構想の策定後、同構想と整合性が図られるよう医療費適正化計画を見直し、第3期計画(2018~23年度)を前倒して実施する。

そもそも「医療費適正化計画」とは、「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づき、国・都道府県が作成するものです。2008年から12年を第1期、13年から17年が第2期になります。その内容は、医療費の見通し、健康の保持の推進や医療の効率的な提供の推進に関する目標などです。

「住民の健康保持に関する」内容としては、特定健康診査実施率、特定保健指導実施率、メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少率、たばこ対策に関する目標です。「医療の効率的な提供」については、平均在院日数の短縮、後発医薬品(ジェネリック製品)の使用促進に関する目標が挙げられています。

2014年10月15日に開催された第82回社会保障審議会医療保険部会に示された、第1期医療費適正化計画(2008~12年度)の評価は、以下の通りです。

・特定健診・保健指導の実施率は、着実に上昇しているが、目標とは開きがある
・メタボリックシンドローム該当者及び予備群は、着実に減少している
・在院日数は、2006年度における全国平均(32.2日)と最短の長野県(25.0日)との差を、9分の3短縮し、12年に全国平均を29.8日にすると定めたが、12年の全国平均は29.7日で目標を達成した
・医療費の適正化(医療費削減の意味ですが)については、47都道府県の見通しの積み上げで、2008年度の医療費見通しが34.5兆円(実績は34.1兆円)のところ、2012年度には「適正化」により約0.9兆円減少し38.6兆円になると見込んでいましたが、実績は38.4兆円で、見通しより0.2兆円削減できたとしています。

医療費見通し 医療費実績 見通しと実績の差
2008年度 34.5 34.1 -0.4
2012年度 「適正化」前 39.5
2012年度 「適正化」後 38.6 38.4 -0.2
※単位は、兆円

この数値をどう見るかは、様々な見方があり難しいのですが、スタート時点で見通しより実績が0.4兆円「削減」しているので、取り組みの効果があった、というのは疑問の残るところです。

(この項、続く)