第933回:医師の説明と患者の納得

香川県保険医協会報2017年10月号の「診察室の窓から」の欄に、「医師の説明と患者の納得」というタイトルの文章を投稿しましたので、再掲します。

医師や患者との「ミスマッチ」と感じるケースを見聞きしました。

早期胃がんで内視鏡治療を受けた方がいます。担当医から、すべて取り切れたという説明を受けて喜んでいるのですが、「転移はなかった」という説明がなかった、と心配しています。

内視鏡所見と病理所見から転移があるはずがないと判断して言わなかっただけではないか、という別の医師の説明を聞いて納得しているのですが、それでも、と考えています。

クレームとして言っているのではないので、大きな問題ではありませんが、内視鏡治療をする前に、「取りきれない場合はどういう治療になるか」、「病理結果に転移の可能性がある場合の次の治療は」、「外科的な処置が必要となる場合はどのような手術法が考えられるか」、など詳しい説明を受けており、それぞれのリスクについて、一つ一つ、心配ないですねといってほしいというのです。

確かに、医師の常識から考えると「言う必要はない」と判断したのでしょうが、すべての方がその説明で納得するとは限らないということなのでしょう。

インフォームド・コンセント、インフォームド・チョイスなど、丁寧な説明が求められますから、場合によっては、およそ起こりえないことでも説明するケースが増えているのだと思います。

医師が「常識」と思っていることが、患者にとっての「常識」とは限りません。

健康診査の時期ですから、結果説明を行う機会が増えました。「肝機能検査で、γGTPが少し高めでした」と説明すると、「γGTPとは、何ですか」という質問はよくあります。先日は「GOT、GPT……」と説明すると、「何の検査ですか」というので、「肝臓の働きを示す数字です」といったら、「肝臓とは何ですか」という質問がありました。

こうなると、どこから説明すればよいのか、こちらが混乱してきます。

患者の理解度は様々で、それぞれに対応する、オーダーメイドの回答が求められる時代になったということではないでしょうか。